バンッという音とともに、ドアが勢いよく開いた。そして、そのまま走って部屋に入ってきたのはスピアとランスだった。
「優!」
「みやび!」
「待っていたぞ、貴様ら」
「!」
奥にしばられた優とみやびを見つけたスピアとランスは、二人を助けようと近づいた。しかし、そこに待ち構えていたツァーリが
立ちふさがる。
「二人を助けたくば、私を倒すことだな。……まぁ、この剣があるかぎり不可能な話だが……」
「それはっ!」
そういってツァーリが取り出したのは、四大星河器の最後の一つである、”破滅の剣ラグナレク”だった。
「さぁ……いくぞ」
「……こい!」「……こい!」
そして、スピアとランスもそれぞれの槍を取り出し、戦いは始まった。
――あたしは、一瞬目を覆いたくなった。でも、おそらく最後の戦いであろうこの戦いを、なんとしてもこの目で見届けたい、
そんな思いもあった――
「ランス、奴のうしろから回りこんでくれ! オレは正面から行く!」
「おうよ!」
スピアはそう言うと、ダッとツァーリのふところにもぐりこみ、気合もろとも槍を突き出した。しかしツァーリは、
「遅い……」
走ってきたスピアの肩にトン、と手を置き、それを支点にひらりと宙返りをした。そして、
「ラグナレクよ、力を!」
「うわっ!」
ツァーリが剣を振り下ろした所から、ドッという音とともに、すさまじい爆発がおこった。
その衝撃があまりにすさまじいために、そのすぐ横にいたスピアはかるがると吹っ飛び、地面にたたきつけられた。悶絶するスピア。
そしてランスも、同時に悶絶していた。
「スピア! ランス!!」
その光景に、思わず声をあげる優。
スピアとランスは、かろうじてその声は聞こえているものの、返事や、なにか動作を起こすことはできなかった。それだけさきほどの
攻撃のダメージが大きいと言うことだ。
「所詮貴様らなんぞが私に勝つなど不可能だったのだ……」
ツァーリは、倒れている二人の元へ、一歩、一歩近づいてきた。
「ま、待て! そいつらになにかしたら、あたしが許さないよ!」
優は、またその光景を目にし、思わず声をあげてしまう。もちろん、その声のツァーリが反応するはずもなかった。
そしてツァーリは、ついに倒れた二人のすぐ横まできてしまった。
「さぁ……選べ。武器を渡してから死ぬか、死んでから武器を渡すか……」
二人は、答えることさえできなかった。
「ふ……そうか。とりあえず死んでもらうぞ」
ツァーリはそう言うと、ゆっくりと剣を振り上げた。もうだめだ、と、人質となっていた優とみやびは思った。
「死ね」
だが、次の瞬間、
「甘いぞツァーリ!」
「僕達を忘れてもらっては困ります」
黒い球体と、白い球体が、同時にツァーリに向かって飛んできた。ツァーリは思わずその場を退く。そこにいたのは、それぞれの
銃をかまえたインフェリアとスーペリアだった。これに驚いたのはツァーリだ。
「……どういうことだ?」
「簡単なことです。僕があなたを裏切ったんですよ」
「さっきの戦いは猿芝居だったんだっての」
そう、さきほどの戦い――インフェリア対スーペリアの戦いは、全て二人の芝居だった。二人のもつ銃、ワイトとラックは、
実は全くダメージのない弾丸をはなつことができ、さきほどの戦いは全てそれで行われていたのだ。
「……貴様ら、殺す」
ツァーリは、そんな二人を見て、頭に血がのぼってしまったらしい、ラグナレクを、当たりかまわず振りまわした。その振り下ろされた
場所からは爆発がおこる。インフェリアは、人質となっていた二人をサッと助け出す。
「死ね死ね死ね死ね、死ね〜〜!!」
ザクッ
次の瞬間、急にピタリと、ツァーリの動きが止まった。
「すきがありすぎだ……」「すきがありすぎだ……」
見ると、全身に傷をおいながらも、それぞれの槍を持ったスピアとランスが、ツァーリの体を後ろからつきさしていた。そして、
その突き刺さった場所は、心臓だった。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!」
刹那。
ツァーリの体から光がはなたれ、そして、爆発を起こした。
「どうなったんだ、バーカ!」
どれくらい時間がたったかは分からないが、さきほどスピア達がツァーリと戦っていた部屋に、カイゼルと戦っていたアフレイドと
フィア、そして、スピア達に言われ隠れていた大地がやってきていた。だが、そこはもはや部屋と呼べるところではなかった。
さきほどの爆発のせいで、天井が崩れ、青い空がひろがっていた。壁も崩れ、かろうじてのこっている地面も、黒ずんでいる。
アフレイドは、そこにいた六人――スピア、ランス、インフェリア、スーペリア、そして、優とみやびの顔をみて、全てを理解した。
「終わったんだな……!」
そして、次の瞬間、そこにいた全員から歓喜の声があがった。
「ついにあのインペリアを倒したんだな、ランス!」
「あぁ! スピア!!」
「アンタらやるじゃないか!」
「みやびちゃん、大丈夫だった?!」
「あ、うん、ありがと、大丈夫だよ〜」
「まったくっ、ほんっっとに大地はっ」
そして、全員の笑い声が聞こえてきた。
壊れた屋根から見える空は青く、澄み切っていた――