3、交渉



「な、なんで、お前がここに……!」

 今スピア達の目の前にいるのは、スピア達がツー・ウェイに――ジャベルはスピアとランスに、テロはアフレイドとフィアに なることになってしまった原因とも呼べるべき人物、インペリアが、いや、その張本人であるインペリアがツー・ウェイになった 姿である、ツァーリとカイゼルだ。
 そして、スピア達はその2人の実力を知っている。
 インフェリアとスーペリアも、初対面のはずなのだが、その2人から発せられる異様な雰囲気に思わず身構えていた。

「スピア、ランス。そこの黒いやつがアンタらを追っていたやつなのかい?」

 優が、スピアとランスに問う。しかし、2人は答えなかった。いや、答えることができなかった。
 インフェリア達も感じているこの雰囲気は、一度戦ったことのあるスピア達にとって、かなりの苦痛と、緊張感と なっていた。故に優の質問に答えている余裕などなかったのだ。
 優は、いつもなら怒りそうなものなのだが、今まで敵を目の前にしたとき、スピアとランスはどんなときも顔には 余裕がうかがえた。しかし、今はどうだろうか。スピアとランスの顔はあきらかにひきつっているではないか。 そんな2人を見ると、それ以上問いかけることができなかった。

「ツァーリ、カイゼル。そこにいる6人・・・1人いないようだが、この人達が、四大星河器をもっている人達なんだね?」

 そんなスピア達をよそに、カズキは顔に笑みをうかべつつツァーリとカイゼルに問う。

「そうだ。カズキよ」

 ツァーリが、まるで変声期でも使っているかのような声でカズキにそう言った。

「アフレイド……」

「い、インフェリア、スーペリア……」

 ただならぬ雰囲気に、大地とみやびがそれぞれ自分がマスターであるツー・ウェイに声をかけた。
 しかし、スピア達同様4人に反応はなかった。

「さぁ、ジャベル……、いや、スピアとランス。槍双を渡してもらおうか……?」

「そしてアフレイド、BCを。インフェリア、スーペリアはノクロを」

 ツァーリとカイゼルは、まるで温かみのない声でそう言った。

「わ、渡してたまるかよ!」

「そのとおり。オレだってBCを渡せねーよ、バーカ」

「オレに命令をするな」

 スピア、アフレイド、インフェリアは、若干声が震えているように聞こえたが、いつもの調子でそう言った。

「やっぱりそうきたね。じゃあこれならどうかな?」

 カズキは、そう冷たく言い放った。次の瞬間、スピア達の視界からツァーリとカイゼルの姿が消えた。

「きゃーー!」「きゃあ!」

 そして、スピア達の後ろにいた優とみやびの悲鳴が聞こえた。
 慌てて振りかえるスピア達だが、そこにはすでに優とみやびの姿はなく、いつのまにかさきほどの位置にもどっていた ツァーリとカイゼルに抱えられていた。

「これなら、どうかな?」

 カズキはまたそう冷たく言い放つ。

「優っ! ひ、卑怯だぞ」

 ランスがそう叫ぶ。

「ふふ、少し考える時間をあげるよ。四大星河器を渡して全員助かるか、それを渡さずに全員死ぬか……。僕達は奥の部屋にいる。 ……いい答えを期待しているよ」

 カズキはいたって冷静に、なおかつ余裕をかまして、スピア達にそう言い残し、この部屋をあとにした。

「……どうするよ、ランス」

「……」

 優は助けたい。今まで何度も殴られたりしたが、やはり宿や食事を提供してくれたことは確かである。

「アフレイド……。優を……」

「ば、バーカ」

 大地もまた、優を助けたい。しかし、自分は無力である。故にアフレイドを頼るしかなかった。

「みやびめ……。めんどうなことを」

 インフェリアは、いつもの調子でそう言うのだが、やはりどこかいつもと違っている。
 そしてスーペリアは――

「マスター……、ボクは、行きます!」

 そう言って、勢いよくドアをあけ、カズキ達が向かったほうに走り出した。
 そんなスーペリアを見て、スピア達は驚きを隠せない。

「な、スーペリア?!」

「あ、あのバカヤロウ! オレより劣ってるくせに……!」

 インフェリアは、驚いたというよりあせっていた。ツー・ウェイであるスーペリアと自分は、どちらかがダメージをうけると、 もう一人も同じダメージをうけてしまう。故にツー・ウェイどうしはお互い離れることは危険なことである。しかも 敵は異様な雰囲気を放つあの2人だ。
 インフェリアは、スーペリアの後を追い部屋をあとにした。

「ランスっ!」

「わかってる!」

「しょうがねーな、バーカ!」

「お、オレもいく!」

 残された5人は、決意し、2人の後を追うのであった。


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