「な、なんで、お前がここに……!」
今スピア達の目の前にいるのは、スピア達がツー・ウェイに――ジャベルはスピアとランスに、テロはアフレイドとフィアに
なることになってしまった原因とも呼べるべき人物、インペリアが、いや、その張本人であるインペリアがツー・ウェイになった
姿である、ツァーリとカイゼルだ。
そして、スピア達はその2人の実力を知っている。
インフェリアとスーペリアも、初対面のはずなのだが、その2人から発せられる異様な雰囲気に思わず身構えていた。
「スピア、ランス。そこの黒いやつがアンタらを追っていたやつなのかい?」
優が、スピアとランスに問う。しかし、2人は答えなかった。いや、答えることができなかった。
インフェリア達も感じているこの雰囲気は、一度戦ったことのあるスピア達にとって、かなりの苦痛と、緊張感と
なっていた。故に優の質問に答えている余裕などなかったのだ。
優は、いつもなら怒りそうなものなのだが、今まで敵を目の前にしたとき、スピアとランスはどんなときも顔には
余裕がうかがえた。しかし、今はどうだろうか。スピアとランスの顔はあきらかにひきつっているではないか。
そんな2人を見ると、それ以上問いかけることができなかった。
「ツァーリ、カイゼル。そこにいる6人・・・1人いないようだが、この人達が、四大星河器をもっている人達なんだね?」
そんなスピア達をよそに、カズキは顔に笑みをうかべつつツァーリとカイゼルに問う。
「そうだ。カズキよ」
ツァーリが、まるで変声期でも使っているかのような声でカズキにそう言った。
「アフレイド……」
「い、インフェリア、スーペリア……」
ただならぬ雰囲気に、大地とみやびがそれぞれ自分がマスターであるツー・ウェイに声をかけた。
しかし、スピア達同様4人に反応はなかった。
「さぁ、ジャベル……、いや、スピアとランス。槍双を渡してもらおうか……?」
「そしてアフレイド、BCを。インフェリア、スーペリアはノクロを」
ツァーリとカイゼルは、まるで温かみのない声でそう言った。
「わ、渡してたまるかよ!」
「そのとおり。オレだってBCを渡せねーよ、バーカ」
「オレに命令をするな」
スピア、アフレイド、インフェリアは、若干声が震えているように聞こえたが、いつもの調子でそう言った。
「やっぱりそうきたね。じゃあこれならどうかな?」
カズキは、そう冷たく言い放った。次の瞬間、スピア達の視界からツァーリとカイゼルの姿が消えた。
「きゃーー!」「きゃあ!」
そして、スピア達の後ろにいた優とみやびの悲鳴が聞こえた。
慌てて振りかえるスピア達だが、そこにはすでに優とみやびの姿はなく、いつのまにかさきほどの位置にもどっていた
ツァーリとカイゼルに抱えられていた。
「これなら、どうかな?」
カズキはまたそう冷たく言い放つ。
「優っ! ひ、卑怯だぞ」
ランスがそう叫ぶ。
「ふふ、少し考える時間をあげるよ。四大星河器を渡して全員助かるか、それを渡さずに全員死ぬか……。僕達は奥の部屋にいる。
……いい答えを期待しているよ」
カズキはいたって冷静に、なおかつ余裕をかまして、スピア達にそう言い残し、この部屋をあとにした。
「……どうするよ、ランス」
「……」
優は助けたい。今まで何度も殴られたりしたが、やはり宿や食事を提供してくれたことは確かである。
「アフレイド……。優を……」
「ば、バーカ」
大地もまた、優を助けたい。しかし、自分は無力である。故にアフレイドを頼るしかなかった。
「みやびめ……。めんどうなことを」
インフェリアは、いつもの調子でそう言うのだが、やはりどこかいつもと違っている。
そしてスーペリアは――
「マスター……、ボクは、行きます!」
そう言って、勢いよくドアをあけ、カズキ達が向かったほうに走り出した。
そんなスーペリアを見て、スピア達は驚きを隠せない。
「な、スーペリア?!」
「あ、あのバカヤロウ! オレより劣ってるくせに……!」
インフェリアは、驚いたというよりあせっていた。ツー・ウェイであるスーペリアと自分は、どちらかがダメージをうけると、
もう一人も同じダメージをうけてしまう。故にツー・ウェイどうしはお互い離れることは危険なことである。しかも
敵は異様な雰囲気を放つあの2人だ。
インフェリアは、スーペリアの後を追い部屋をあとにした。
「ランスっ!」
「わかってる!」
「しょうがねーな、バーカ!」
「お、オレもいく!」
残された5人は、決意し、2人の後を追うのであった。