「も、もう驚きすぎてどんなのがでてきても驚かないと思ってたけど、この家……すごすぎ」
優は、目の前にある、ほかの別荘とはあきらかに違う大きさ、そして豪華さの家を見てそういった。
一行は、車をおりて少し歩いた後、今ここにいるのがだ、スーペリアが案内した家を見ると、みやびの別荘もそれなりに大き
かったのだが、それすら比にならないほどの大きさで、門を空ける前に思わずその前で立ちすくんでしまったのだ。
ちなみにこの場にフィアはいない。もってきたお土産を、うっかり車の中に忘れてしまったために、フィアがそれをもってくる
役目となったからだ。
「さ、ささささ、さぁ、行くよ」
優は、声が震えていた。ついでに、手、それどころか体全体を震わせていた。何度も書いて恐縮なのだが、優はこういう高級
のようなことにはなれていない。故にいつもの優とは全く違い、気弱な一面をみせているのだ。
「優さん震えてるよー。あたしが変わりにチャイムおすね」
そんな優を横目に、みやびがその家相応のチャイムを押した。
しばらく間があいた後、スピーカーから声が聞こえた。どうやらその家のメイドらしい。
「主人より承っております。どうぞお入りください」
またしばらく間があいた後、優達の目の前にある大きな黒い門が、金属がこすれるような音とともに開いた。
「あわわわ、ひ、開いた〜〜」
「おい、大地。優のやつってこういうとこくるといつもああなのか?」
「はは、まぁ、たしかそうだったな」
スピアがそんな優を見て大地に尋ねる。大地は苦笑してそう答えた。
「ここでしばらくお待ちください」
メイドにそう言われ、優達は応接間に案内された。
やはり中も、外から見たときの印象にそぐわぬつくりとなっていた。家の中に入り上を見上げるとシャンデリアがあるし、
この部屋にある時計一つとってみても、軽く何十万、といったところである。
そんなこの家を、おもわずしげしげと見つめてしまう大地。社長令嬢であるみやびでさえ、思わずみとれてしまったいた。
「今時こんな家ありかよ……」
「さすがにこれはやりすぎかも……」
そして、二人はため息まじりにそう言うのであった。
ちなみに、優は、というと、
「おいランス、あの女男目がおかしいぞ」
「優のやつ、完全にいっちまってるな」
もはや放心状態である。
ガチャ
と、その時、部屋のドアが開き、この家の主らしき人物が現れた。
いったいどんな人物が現れるのかと思えば、そこに立っていたのは金髪で、まだかなり若い男性だった。その男性が部屋に入り、
何か言おうと口をひらいたその時――
「か、か、か、あ、あなた、カズキさん??!!」
「え?! あああああ!! カズキ! 生カズキぃ?!」
みやびと優が、悲鳴まじりでそう言った。
「やぁどうも。僕のことを知っていてくれるなんて嬉しいな。その通り、僕はカズキです」
そのカズキと名乗った男性は、そう言って優達の向かい側のイスに座った。
なぜ優とみやびがカズキを知っていたのか。答えは簡単である。そのカズキは、今巷で大人気のアイドル歌手だからである。
カズキは、ジュニアの出で、初めからかなりの人気だったのだが、最近とあるバラエティー番組に出演したあと、その人気
に一気に火がついたのだった。
そんなカズキが目の前にいるのだ、女子であるみやびと優は興奮せずにはいられないのである。
「え、えっとあたしみやびって言います! 初めまして!」
「あ、あたしは優、川崎優です!」
「みやびちゃんに優ちゃんだね、よろしく」
そんな女子2人をよそに、男子6人はげんなりとしていた。
「ま、マスターが変に……」
「あの女男はいったいいくつ顔をもってるんだ」
スーペリアとアフレイドは、そう言って呆れてしまっていた。
「これは使えそうだ」「これは使えそうだ」
スピアとランスは、声をそろえてそう言った。
「み、みやびちゃん……」
大地はガックリ肩を落としている。
「……」
インフェリアに至っては、席を立って飾られている備品を眺めていた。
「まぁとにかく落ち着いてくれ。優ちゃんもみやびちゃんも。今日はツー・ウェイのことについて話を聞きに来たんだろう?」
「あ、そうでした……」「あ、そうでした……」
2人の勢いに押され始めたカズキが、とりあえず2人を制した。そのカズキの言葉に、ようやく我にかえった優とみやび。
「僕は”ツァーリ”と”カイゼル”という2人のマスターなんだ。もうすぐ来るはずだよ」
ガチャ
カズキがそう言った丁度その時、またドアが開き、2人の人が現れたその時――
「お、お前は!」
「い、インペリア!」「い、インペリア!」
アフレイドとスピア、ランスがそう言った。
そう、そこに立っていたのは、前にスピアとランスが一人――ジャベルのとき、追われていた人物、インペリアと容姿が同じなのだ。
つまり、少し特徴のある黒い鎧を来ているのだ。そしてその鎧が同じなのである。
「よくきたな、四大星河器の所持者達」「よくきたな、四大星河器の所持者達」
その黒い鎧の2人――ツァーリとカイゼルは、スピア達に向かってそう言った。