2、その家の主



「も、もう驚きすぎてどんなのがでてきても驚かないと思ってたけど、この家……すごすぎ」

 優は、目の前にある、ほかの別荘とはあきらかに違う大きさ、そして豪華さの家を見てそういった。
 一行は、車をおりて少し歩いた後、今ここにいるのがだ、スーペリアが案内した家を見ると、みやびの別荘もそれなりに大き かったのだが、それすら比にならないほどの大きさで、門を空ける前に思わずその前で立ちすくんでしまったのだ。
 ちなみにこの場にフィアはいない。もってきたお土産を、うっかり車の中に忘れてしまったために、フィアがそれをもってくる 役目となったからだ。

「さ、ささささ、さぁ、行くよ」

 優は、声が震えていた。ついでに、手、それどころか体全体を震わせていた。何度も書いて恐縮なのだが、優はこういう高級 のようなことにはなれていない。故にいつもの優とは全く違い、気弱な一面をみせているのだ。

「優さん震えてるよー。あたしが変わりにチャイムおすね」

 そんな優を横目に、みやびがその家相応のチャイムを押した。
 しばらく間があいた後、スピーカーから声が聞こえた。どうやらその家のメイドらしい。

「主人より承っております。どうぞお入りください」

 またしばらく間があいた後、優達の目の前にある大きな黒い門が、金属がこすれるような音とともに開いた。

「あわわわ、ひ、開いた〜〜」

「おい、大地。優のやつってこういうとこくるといつもああなのか?」

「はは、まぁ、たしかそうだったな」

 スピアがそんな優を見て大地に尋ねる。大地は苦笑してそう答えた。

u

「ここでしばらくお待ちください」

 メイドにそう言われ、優達は応接間に案内された。
 やはり中も、外から見たときの印象にそぐわぬつくりとなっていた。家の中に入り上を見上げるとシャンデリアがあるし、 この部屋にある時計一つとってみても、軽く何十万、といったところである。
 そんなこの家を、おもわずしげしげと見つめてしまう大地。社長令嬢であるみやびでさえ、思わずみとれてしまったいた。

「今時こんな家ありかよ……」

「さすがにこれはやりすぎかも……」

 そして、二人はため息まじりにそう言うのであった。
 ちなみに、優は、というと、

「おいランス、あの女男目がおかしいぞ」

「優のやつ、完全にいっちまってるな」

 もはや放心状態である。

 ガチャ

 と、その時、部屋のドアが開き、この家の主らしき人物が現れた。
 いったいどんな人物が現れるのかと思えば、そこに立っていたのは金髪で、まだかなり若い男性だった。その男性が部屋に入り、 何か言おうと口をひらいたその時――

「か、か、か、あ、あなた、カズキさん??!!」

「え?! あああああ!! カズキ! 生カズキぃ?!」

 みやびと優が、悲鳴まじりでそう言った。

「やぁどうも。僕のことを知っていてくれるなんて嬉しいな。その通り、僕はカズキです」

 そのカズキと名乗った男性は、そう言って優達の向かい側のイスに座った。
 なぜ優とみやびがカズキを知っていたのか。答えは簡単である。そのカズキは、今巷で大人気のアイドル歌手だからである。 カズキは、ジュニアの出で、初めからかなりの人気だったのだが、最近とあるバラエティー番組に出演したあと、その人気 に一気に火がついたのだった。
 そんなカズキが目の前にいるのだ、女子であるみやびと優は興奮せずにはいられないのである。 「え、えっとあたしみやびって言います! 初めまして!」

「あ、あたしは優、川崎優です!」

「みやびちゃんに優ちゃんだね、よろしく」

 そんな女子2人をよそに、男子6人はげんなりとしていた。

「ま、マスターが変に……」

「あの女男はいったいいくつ顔をもってるんだ」

 スーペリアとアフレイドは、そう言って呆れてしまっていた。

「これは使えそうだ」「これは使えそうだ」

 スピアとランスは、声をそろえてそう言った。

「み、みやびちゃん……」

 大地はガックリ肩を落としている。

「……」

 インフェリアに至っては、席を立って飾られている備品を眺めていた。

「まぁとにかく落ち着いてくれ。優ちゃんもみやびちゃんも。今日はツー・ウェイのことについて話を聞きに来たんだろう?」

「あ、そうでした……」「あ、そうでした……」

 2人の勢いに押され始めたカズキが、とりあえず2人を制した。そのカズキの言葉に、ようやく我にかえった優とみやび。

「僕は”ツァーリ”と”カイゼル”という2人のマスターなんだ。もうすぐ来るはずだよ」

 ガチャ

 カズキがそう言った丁度その時、またドアが開き、2人の人が現れたその時――

「お、お前は!」

「い、インペリア!」「い、インペリア!」

 アフレイドとスピア、ランスがそう言った。
 そう、そこに立っていたのは、前にスピアとランスが一人――ジャベルのとき、追われていた人物、インペリアと容姿が同じなのだ。 つまり、少し特徴のある黒い鎧を来ているのだ。そしてその鎧が同じなのである。

「よくきたな、四大星河器の所持者達」「よくきたな、四大星河器の所持者達」

 その黒い鎧の2人――ツァーリとカイゼルは、スピア達に向かってそう言った。


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