4、優劣のスナイパー



「アンタらのもってる武器がそんなに有名だったなんてねぇ」

 ここはみやび宅の来客用の寝室である。
 といってもみやびは一人暮らしだった故に、部屋があまっていたのでそういうふうに勝手に名前をつけただけであるが。
 優達は、さきほど風呂をすませ、就寝前の雑談をしていた。話題はさきほどのスーペリアの話の中の四大星河器のことである。

「オレらは、”槍双のジャベル”っていう通り名で有名だったんだぜ?」

「ついでにオレとフィア……もともとはテロってんだけど、”BCのテロ”っていう通り名があった」

 スピアとアフレイドの話は本当である。
 四大星河器は、全宇宙でそうとう有名な四つの武器のことをさしている。それを所有しているのだから有名になるに きまっているのである。なおかつスピア達は強い。スピア達より数段体格の大きい戦士が何人かかってこようとも たおせるものはいなかった。
 それ故にスピア&ランス―ジャベルと、アフレイド&フィア―テロは通り名がつくほど有名だったのだ。

「有名なのはわかったけどさ、そのBC……バビロン……なんだっけ?」

「バビロンクライだバーカ」

「そうそれそれ。なるほど、バビロンのBにクライのCか。バビロンっていえば……華美と悪徳の都って意味だっけね。 クライは泣くか。なんとなく意味はわかるね」

「は? カビ? ナク? なんでだ?」

 バビロンとクライの意味を訳した優に、アフレイドがそう問う。

「あぁ、そういえばアンタら日本語しかわからないんだっけ」

 そう。
 スピアやアフレイドは、自分達の乗ってきた宇宙船シルヴォに搭載されたシステム、”言語学習システム”によって この国―日本の言葉を話すことができている。本来そのシステムは、その星全ての言葉を話すことができるようになるのだが、 ここ地球はたくさんの言語がある。それ故に、日本という一定地域の言語しか知ることができなかったのだ。
 だから、英語はてんでわからないのである。

「まぁこのことに関しては、あたしはうまく説明できる自信がないよ」

 とりあえず、こんなところで就寝前の雑談はおひらきとなった。
 ちなみに大地はこの場にはいない。なんとみやびの部屋まで乗りこんで話をしにいってしまったのだ。

u

 草木も眠る丑三つ時。
 さすがに大地も、優達と同じ部屋で寝ている。
 6人は、どうやら熟睡しているらしく、ピクりとも動かない。
 ―と。
 スピアの頭のほうにあるドアが、キイと小さな音を立てて開いた。電気が消えていて、だれがはいってきたのか確認できない。
 その入ってきた人は、また小さな音でドアを閉めた。そして―

 ガギャッ

「だれだ!」 「だれだ!」

 その人がなにかしようとしたとたん、スピアとランスが目をさまし、それぞれの槍を、スピアとランスでクロスして その人のほうを向けてかまえた。
 その騒ぎに気づいたのか、優が目を覚まし、何事かと思いちょうど立ちあがったところにある電気のスイッチをいれる。
 急に明るくなり、一瞬視界が悪かったが、すぐに視界はひらけ、入ってきた人の顔を見ることができた。そこにいたのは―

「い、インフェリア!」

 銃をかまえたインフェリアだった。

「チッ、おきたか」

「なんのつもりだ! オマエ!」

 スピアが鋭く叫んだ。同時にアフレイドとフィアも目を覚ました。

「見て分からんのかスピア。オレらをやりにきたんだろーがバーカ」

「……敵」

 そしてそう言って立ちあがり、BCをかまえた。
 スピア達四人は、インフェリアとの間合いをジリジリと狭めていく。
 そんな四人を見たインフェリアは、

「はぁっ。四人と戦う気なんてないね。分が悪すぎる。寝ているところをこっそりやりたかったんだがな……」

 そう言ってかまえていた銃を下に捨てた。
 しかし、スピア達は緊張をとくことができない。当たり前だ。

「そんなんですむと思ってんのか、オイ!」

 ランスはそう言って、インフェリアの首根っこをつかんだ。

「そう興奮しなさんなって。もうオレは戦う気なんてないっつってんだよ」

「あ、あんだと〜〜?!」

「落ち着けって、ランス」

 興奮するランスに対して、インフェリアは冷静だった。そんなランスをみかねてとめに入る優。

「とにかく、みやびちゃんとスーペリアも呼んで説明してもらうよ」

u

「ごめんなさい!」

 話を聞いたみやびは、優達にただただ謝った。そんなみやびを見て、ようやく落ち着きをとりもどしたランス。

「コラインフェリア! なんでそんなことを……」

 みやびは泣きそうな顔でインフェリアに問う。

「ツー・ウェイを元に戻したいからに決まってんだろ。ジェネラルんときより弱くなってるし、オレツー・ウェイの スーペリアは劣ってるし。それの何が悪いんだ? そこの赤青コンビとツンツン、その他女コンビだってツー・ウェイ を元に戻したいからスーペリアの話を聞きに来たんだろう。同じことだ」

 ツンツンといわれて少しムッとしたアフレイドだったが、たしかにインフェリアの言っていることは分からなくない。 故になにも言うことができなかった。スピアやランス、フィアもまた然り。
 たしかに、スピア達はツー・ウェイを元に戻したいという気持ちはある。しかも、かなり強い思いだ。 インフェリアの言っていることはわかる。だが、なにか違う。ただ、なにを言っていいかわからないのだ。さすがの優も同じだ。

 バシッ

 みやびが、インフェリアの頬をはたいた。
 いきなりの出来事に、優達はもちろん、たたかれたインフェリア本人も驚いていた。

「インフェリアのバカ! なんでそんなことするの?! 貴方の早くもどりたいっていう気持ちは痛いほどわかるけど、 そんなことやっちゃダメだよ……。スピアくん達とアフレイドくん達を見てよ! 別々のツー・ウェイなのに、一緒に 行動して、一緒にツー・ウェイを直そうとしてるんでしょ? だからあたしも、インフェリアもスーペリアも、一緒に 頑張れば、もっと早くツー・ウェイを元に戻す手がかりが見つかるかもって思ってたのに……。さっき大地くんも言ってた。 一緒に頑張ろう、そうしてあいつらを元に戻してやろう、って。それなのに……なのに……」

「マスター……」

 スーペリアは、そんなみやびにかける言葉が見つからなかった。インフェリアは、下を向いている。みやびは、泣き出してしまった。

「み、みやびちゃん。とりあえず部屋にいこう」

 優がみやいをそううながし、優とみやびはみやびの部屋へ行った。
 二人が消えると、スーペリアが口をひらいた。

「インフェリア、なんでそんな……。昨日いったじゃなですか。スピアさん達と協力しようって……」

「うるせぇ! オレはただおさらばしたいだけなんだよ。お前とも……今のオレとも……」

 インフェリアはそう言うと、自室にいってしまった。
 スピア達は言葉もでなかった。

「すいません、スピアさん、ランスさん、アフレイドさん、フィアさん。本当にすいません」

 残されたスーペリアは、インフェリアのかわりにスピア達に謝った。
 そんなスーペリアや、さきほどのみやびを見て、もはや怒ると言うより、こちらも頭をさげたくなってしまうスピア達。

「お前は悪くないだろー。謝ることないって」

「スピアの言うとおり! それにあのインフェリアだって、オレ達と同じくツー・ウェイを直したいだけなんだし」

「今回だけは許してやってもいーぜバーカ」

「同意」

 スピア達口々に、そうスーペリアに声をかけた。

「ありがとうございます……!」

 スーペリアは、小さい声ながらも、すごく感情のこもった声でそう言った。そして、

「あの、おわびといってはなんなんですけど……、実は、ボクよりツー・ウェイのことを詳しく知っている方がいるんですけど、 今度、その方に会いに行くんです。よければ、一緒にいきませんか?」

 ひともんちゃくあったものの、とにかく新たな道がひらけたスピア達。
 しかし、この選択がスピア達の運命を大きく左右することになる――

「そういえば、大地は?」

「あ、あの寝ボスケまだ寝て屋がるかも」

「けっ、よくあの騒ぎの中寝てられるよな、バーカ」

 ――のか?


(3章終了)

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