1、ツー・ウェイというもの



 ガタンゴトン

 一同は電車に乗っていた。さきほど優の運転する車で街の駅まで来たのだ。
 今日は休みで、会社にいくサラリーマンのような乗客は少ないのだが、どこかへ遊びにいくのだろうか、 中高生のいくつかのグループがのっており、優達は座ることができなかった。

「まったく! 大地はあいっかわらず寝ぼすけなんだから!」

「わ、わりぃ。昨日夜中までコイツらにゲームつきあわされちまって」

 少し起こり気味で話す優。そんな優を見て少し小さくなってしまう大地。ちなみにコイツらというのは アフレイドとフィアのことだ。なぜかゲームにものすごくハマってしまい、大地をまきこんで ずっとやっていたらしい。

「はぁっ。とにかく、目的地につく前にツー・ウェイとやらで知ってることはなしとくれ」

「あぁ、分かった」

「スピア、ランス。アンタらも聞いてなよ」

 優にうながされ、大地は話し出した、いや、話し出そうとした。

「えっと、ツー・ウェイってのはだな……、う〜んと、えーと、なんていえばいいんだ?」

「あたしがしってるわけないだろっ!」

 優はおもわず大声を出してしまい、周りのほかの乗客からジロジロみらてしまい、少し恥らいながら、

「はぁ、あいかわらず説明下手だね、大地は」

 と、声を小さくしてそう言った。
 優は大地に聞くことをあきらめ、アフレイドに聞いてみることにした。アフレイドはものめずらそうに 外の景色や他の乗客などを見ていた。

「へぇ、地球とはこういうとこか。遅れてるな。あんなデカイ建物作らんでも地下にガンガンつくればいいのにな。 ほんと、バカだ」

 昨日聞いた話なのだが、どうやらスピア達とアフレイド達は同じ星に住んでいたらしい。そしてその星 は、地球の日本やアメリカといった先進国よりもはるかに技術が進んでおり、そういった先進国にあるような ものとはなにかと違うと言うことだった。
 さきほどアフレイドが口にしたビルひとつにしても、地上にやたらと大きなものを建てるのではなく、 1階や2階の小さなビルがたくさんあり、その地下に何層も作ってあるらしいのだ。

「おい、クリ。クリっ」

 優がアフレイドのほうを向いてそう言った。アフレイドは反応しない。
 そんなアフレイドを見て、優はアフレイドの方をグイとつかんで、

「おいクリッ。無視するんじゃないよ!」

 そう言った。どうやら”クリ”というのはアフレイドのことを指しているらしい。

「はぁ?オレはアフレイドだ。クリってだれだよバーカ」

「アンタだよ。ア・ン・タ! その髪、どう見たって”クリ”だろぉ」

 そう。たしかにアフレイドの髪は、茶色でツンツンたっているので、イガグリにみえなくもない。
 ただ、やはり本人はその呼び名が気に入らないらしく、

「はぁ?! 死にてーのかオマエ?いつかみたいにBCでクモみせてやろうか?」

 アフレイドはそう言うと、優のほうをにらんだ。

「・・・文句あるのかい?」

 それに対して優は、アフレイドをギンッとにらみかえした。

「す、すいません・・・」

 アフレイドは、その迫力におもわず謝ってしまった。
 スピア達もそうなのだが、自分のもつ力をつかえば優を簡単に倒すこともできそうなものなのだが、 それができないのだ。なぜなら優のもつ妙な迫力によって、優に敵対することを拒んでいるからだ。
 うん、恐いね。優さん。

「まぁとにかく、こんなくだらない話してる場合じゃないよ。あんまり大きな声出すとまわりに迷惑だし・・・。 大地が説明下手でわかりにくいから、アンタに教えてほしいんだよ、ツー・ウェイのこと。それと、そのBCってやつのこと」

「なんでオレがそんなこと説明しないといかんのだ。めんどいぜバーカ。フィアにでも聞いてくれー」

「わかったよ。それよりアンタ、その”バーカ”っていうのやめたほうがいいよ。口癖なんだろうけどさ」

 優はそう言うと、大地のとなりにいるフィアに向かって、アフレイドと同じ問いかけをした。
 フィアはアフレイドと違い、落ち着いていた。もともと同一人物なのにこうも違いが出るものなのだろうか。

「お答えします。まずはツー・ウェイ。
 ツー・ウェイというのはもともと一人の人間が、この地球にはいるさいに見る謎の光により、別の二人に なってしまう現象のことです。そして、その二人になってしまった人間は、この地球の人間の元に現れます。 なぜかはわかりませんが、二人になってしまった人間は必ずそういうふうになるそうです。 そして、その地球の人間のことを”マスター”と呼ぶそうです。
 例えば、私とアフレイドのマスターは大地さん。スピアさんとランスさんのマスターは、あなた、優さんです」

「あ、あたしがアイツらのますたぁ?!」

 優はまたしても大声を出してしまい、まわりの客からジロジロ見られてしまう。

「ご、ごめん。続けて」

 フィアはそのまま続ける。
 優はさきほどから思っていたのだが、このフィアという少女、表情が全くかわらないのだ。今考えてみると、 この前スピア達と戦っているときのフィアの表情も全くかわらなかったし、昨日ゲームをやっているときのフィアの顔も いっさいかわらなかった。
 ただ、今はそのことを考えていてもしょうがないので、とにかくフィアの話を聞くことにする優。

「それで、その二人になってしまった人間は、次に言う不特定多数のパターンになるようです。
 まずは一つ目、スピアさんとランスさんがいい例ですが、同じ性、同じ性格、同じ容姿、というように全て同じで分かれるパターン。
 次に、私とアフレイドが例ですが、別の性、正反対の性格、同じ実力、というふうに、才能に対しては同じに分かれても、 性や性格で反対になりわかれてしまうパターン。
 それ意外にも、性格が同じでも性だけ違ったり、それの逆もあったり、なにからなにまですべて真逆になったりと、とにかく パターンはさまざまですが、必ず、”同じ”か”逆”になるそうです」

 優は、これでさきほど思った疑問の答えがでた。

(なるほど。だからクリとフィアちゃんの性格ぜんぜんちがったのか)

 これでひとつ疑問は消えたが、もうひとつの疑問が残っていた。

「じゃあ次はBCの……」

「優、大地がここでおりるってよ」

「優さん、残りは歩きながら話します」

 どうやらおりる駅についたらしく、話はここで切ることにした。

u

「あたし、人多いとこダメかもぉ・・・」

 6人がきたのは銀座だった。
 今日は休日故か、ただでさえ人が多い場所なのにさらに人がたくさんいる。
 優は、田舎暮らしがなれてしまったせいか、あまり人混みは得意ではなかった。ただ、大地のほうはというと、平日は大学にいっている ので、さすがに慣れているとはいわないが、平然としている。そればかりか、スピア達ツー・ウェイ四人も普通にしていた。
 なんだか優は、そんな場慣れしている5人をみると少し悔しかった。
 そんな優の考えを悟ったのか、ランスは、

「まぁ、オレらのいたとこも人多かったからな」

 と、だれともなしにそう言った。

「こっちだ」

 とりあえず優達は、大地にいわれるがまま、そちらについていった。

u

 6人がついたところは、いかにも金持ちがすんでいそうな高層マンションだった。
 思わずみあげてしまう優。

「大地、ここ?」

「そうだ。ここの24階だったかなぁ?」

 正直なところ、優は緊張していた。さきほども言ったが、優は田舎暮らしが慣れてしまっているためかあまりこういう場所は 得意ではない。しかも今度はマンションなのだ。しかも高級そうなのだ。故に優は緊張していた。

 チンッ

 どうやらエレベーターが24階についたらしく、音がしてドアが開いた。

(そういえばフィアちゃんにBCのこと聞くの忘れてたよ)

 優はそう思ったが、なんとなく聞きづらくてやめた。これも緊張のせいなのかもしれない。
 ただ、さきほどから優が感じているこの緊張、なにか変なきがする、と優は感じていた。だが、やはり慣れない場所だから だろうと自分を納得させ、この場はそのまま過ごした。

「さぁついたぞ。ここだ。2406室」

 大地はそう言ってその2406室を指差した。
 優は、マンションなのになんでこの扉こんな重そうなんだろう、とか考えていた。

 ピンポーン

 そんな優をよそに、大地はチャイムを鳴らした。
 ほどなくしてその部屋の住人とおぼしき人物が現れた。

「あ、大地さん。アフレイドさんともフィアさんも。いらっしゃい」

 そこにいたのは黒くて長い髪の男だった。

「うしろにいる方が昨日電話でいっていたスピアさんにランスさん、それに優さんですね。はじめまして、スーペリアといいます」

 とりあえず軽く挨拶をすませた6人は、部屋へとあがらせてもらうことにした。
 部屋の中に入ると、そこはいかにも高級そうなものばかりが並んでいた。
 ソファひとつにとっても、大地の部屋にあるようなものとは格がちがうと、一目みただけでわかった。ちなみに 優の家にソファはない。優はおもわず辺りをグルグル見回してしまった。
 と、そのとき――

「動くな!」

 ふいに優達の後ろから声が聞こえた。驚いてふりかえると、そこにはスーペリアとそっくりで白くて長い髪 の男が、白い銃をかまえて立っていた。

「な……お前らツー・ウェイだったのかよ、バーカ」

「フフ、その通りだ。オレはインフェリア。そこにいるスーペリアのツー・ウェイだよ」

 見るとスーペリアまでもが黒い銃をかまえているではないか。

「どういうつもりかはしらねーけど、その銃おろしたほうがいいぜ」

「痛い目見る前にな」

 スピアとランスはそう言い、戦闘態勢にはいるのであった。


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