3、戦いの余韻



「ん・・・・・」 「ん・・・・・」

「あ、目が覚めたかい?」

 スピアとランスが目を覚ますと、二人はラーメン屋の2階にいた。二人は敷布団の上に寝かされている。

「・・・なんでここにいるんだっけ?」

 スピアは、少し意識がうつろなのか、今の状況をしっかり把握できていないようだ。ランスもまた然り。 辺りをキョロキョロみている。

「覚えてないのかい?ランスが逃げろっていうから、アンタら二人を背負ってここまできたんだよ」

 優のその言葉に、二人はハッとして、

「そうだ!それだ!!」

「・・・オレらあいつらに負けたんだっけな」

 ようやく状況を飲み込んだ二人は、さきほどの戦いのことを思い出していた。いくら相手の技をわかっていなかった とはいえ、負けは負けだ。思い出すだけで悔しさがわきでてくる。

「とにかく、どうなったのか詳しくきかせてくれ」

 優がそう言うと、二人は戦いの一部始終を話し始めた。

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「そういうことだったのかい。だからあのときデカイクモがあたしの前に現れたってことか」

 話を聞き終えると、優もさきほどのことを思い返していた。
 優は、アフレイドとフィアによって 自分の一番きらいなクモをみせられ、それに追われていたのだ。 「あぁ、思い出しただけでイヤになるよ」

「お前にキライなものがあるなんて意外だな」

「同感」

 ガンッ

「ぐぁ!?」「ぐぁ!?」

 余計なことをいってしまった二人は、優のパンチをみぞおちにおもいきりくらってしまった。といっても  優が殴ったのはスピアだけだが。

「ふぅ、ツー・ウェイってのはこういうとき楽だねぇ」

 優の口からサラッとでてきた言葉、”ツー・ウェイ”。その言葉におもわず首をかしげる二人。

「・・・今ツー・ウェイっていったよな?」

「優、お前それどういう意味か知ってんのか?」

 そんな二人の問いに、優はヤレヤレといったかんじで、

「アンタら、あの二人の会話を聞いて理解できてないのかい?バカだね〜」

「なに?!」 「なに?!」

 と二人を小バカにしたようにして言った。

「しょうがない、説明してやるよ。つまりツー・ウェイっていうのはアンタらみたいに一人が二人になったやつらのことだよ。 もちろんあのアフレイドとフィアとかいうのもだ。でだ。そのツー・ウェイってのはアフレイドとフィアが いってたとおり一人がダメージをうけるともう一人もダメージを受ける。
・・・今わかってるのはこんなとこだね」

 優が話し終わると、二人は黙っていた。なにか考えているのかと思ったら、

「すげ〜〜!優お前すげ〜!よくそんだけわかったなぁ!」「すげ〜〜!優お前すげ〜!よくそんだけわかったなぁ!」

 なぜかはわからないが、二人は変に感動したらしい。そのあともしばらく「すげ〜」と連発していた。

「い、いや、ホントバカだろ、アンタら」

 優は半ば呆れてそう言った。しかし、すぐに深刻な顔をして、

「と、とにかく落ち着け。たしかに少しは情報も手に入れたけど、問題もあるんだよ」

 と言った。少し表情が変わった優を見て、二人とも黙って話しを聞くことにした。

「一番大きな問題は、大地のこと。あのときはアンタら二人をかつぐのが精一杯で大地はかついでこれなかった。 といってもどこにいるのかわからなかったけどね。それとなんで大地があのときあたしやアンタらを呼びに来たか。 もしかしたらアフレイドとフィアにあやつられたりおどされたりしてるのかもしれない。なんにしても大地を 助けないと・・・!それとアイツらが言ってたBCってもんのこと。あたしの推測だとあの黒い丸いやつだと思うんだよ。 それとBCってなんかの略だと思うんだよねぇ」

「あの大地ってやつはたしかにどうなったか疑問だよな」

「だな。それはそうと、その”びぃしぃ”ってのがオレらにはよくわからんのだが」

 スピアとランスは、BCという言葉の意味がよくわかっていなかった。というか根本的なところでよくわかっていないようだ。

「そんなのあたしにもよくわかんないよ。ただ”バンプ チキン”ってなかんじで略されてんだろうって話。 ちなみにバンプチキンってのは少し前にカズキが属していたグループで・・・って、いってもわかんないか」

「なんで”ばんぷちきん”になるんだ?」

「え?だから”バンプ”の頭文字はBでしょ。で、”チキン”はC・・・いまさらなんだけど聞いていいかい?」

 優がスピアとランスのほうを向いて、けげんな顔をして質問した。

「アンタらほんまもんの宇宙人なんだろ?あのアフレイドをフィアってのもそうなんだけどなんで普通に 日本語はなしてんだい?まさかアンタらのいるところの言語がたまたま一致したとか?」

 優の質問はもっともであった。たしかに異星人であるはずの二人が、地球の言語を、ましてや日本語を 話しているなんて不思議でしょうがない。
 しかし、スピアとランスはあっさりとその質問に答えた。

「あぁ、それか。オレらは”シルヴォ”っていう、う〜ん、いわゆる宇宙船にのってきた」

「で、そのシルヴォにはこの星にないすげー機能がたくさんついてんだよ。 その中に”言語学習システム”ってのがあんだよ」

「そう、それでオレらは宇宙船が壊れちまう少し前にそれを起動させて、この星の言語を学んだってわけだ」

 優は、一瞬二人のいっていることが理解できなかった。その話がにわかに信じがたい話だったからだ。
 しかし、いままで二人が嘘をいったことがなかったので、なんとか理解することができた。

「へ、へぇ。なんとなくわかったようなわからんような。まぁそれはいいや。アンタら、この”星”の言語 っていったよな?それは間違いだよ。この星にはたくさんの言語があるからね。今アンタらや、あたしが 話しているのは日本語だよ。で、さっきのBCっていうのは英語。といってもわかんないかもしれないけどね」

「おう、わからん」 「おう、わからん」

 あまりにあっさりそういってのけた二人に、おもわず優はコケそうになった。
 とにかく二人はこういう根本的なところで理解できていなかったのだ。

「も、もうこの話はやめにしよう。あたしもうひとつきになっていることがあるんだよ」

「ん?」 「ん?」

 優はさきほどアフレイド、フィア、と口にしたときにふと思ったことがあった。

「あの二人、なんでアンタらをねらってるんだろ。はじめはインペリアとかいうのの手先かなんかかとおもったけど 、どうやらちがうみたいだしね」

「あぁ、そうだな」

「あいつらもドールにねらわれてたもんな」

 3人はうなずきながらそう言った。
 と、ここでスピアがなにか思い出したようにいう。

「あっ。そういえばあいつらオレらと戦う前、”私達の目的はただひとつ。あなた達二人――ツー・ウェイを倒すこと” とかいってなかったか?!」

 たしかにそのとうり、戦いの前フィアがそう言っていた。ただ、このことに関してはいっさいわからないままだった。

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 とりあえず入手した情報を整理した3人は、今後どうするかということについて話し出した。
 もちろん、アフレイドとフィアを撃退することと、大地を救出することについてがメインだ。

「アンタら、もう一回戦ったらアイツらをたおせるかい?」

「もちろんだ!」 「もちろんだ!」

 自信たっぷりに答える二人だったが、そんな二人に優はにわかに不安をおぼえた。

「さっきはこてんぱんにやられたろ?・・・今度は秘策かなんかあるのかい?」

「こ、こてんぱんでわるかったな!」

「秘策か?秘策ならあるぞ!」

 ランスのその言葉に、優の不安は消えた・・・かに思えた。

「あの光がきたら目を閉じるっ!」

 ドスッ

「うぇ?!」 「うぇ?!」

 二人はまたしても、優のパンチをくらってしまった。

「あ、アンタらホントにやる気あるの?そんなことであの攻撃が防げるんなら警察はいらないっての」

 そんな優の言葉を、聞こえているんだか聞こえていないんだか。二人はのびてしまっていた。


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