1、大地の異変
バリーン バリバリーン
「こらぁ!またやったな!!」
スピアとランスがラーメン屋にやってきて、はや1週間がたとうとしていた。二人は壊してしまった店の裏の分
働かなければいけなかった。もちろん優は、宇宙船などの話はもう嘘だとは思っていない。だが、やはり店を壊
したことは事実、と言って、スピアとランスは結局働くはめになったのだ。しかし、スピアもランスも、てんで
この仕事にはむいていなかった。まずは皿洗いをしてみる二人だったが、すぐに皿をおとして割ってしまう。
次にカウンター席以外のところに料理を運ぶことをしてみた。しかしそれも落としてしまい、結局ダメ。
それならばと、今は客のオーダーを聞いて大将と優に伝えるといういたって簡単な、いや、簡単すぎる仕事だ。
しかし・・・
「いいかげんにしろ〜〜〜!もういい!スピアとランスは2階にいってろ〜〜〜」
なぜかはわからないが、スピアとランスは調理場でウロチョロしてしまい、やたら邪魔なのだ。
ついに優に怒られてしまい、二人は2階へとあがっていった。
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「ふぅ。なーんかあういうのは苦手なんだよな」
「だよな〜。ってかさ、やっぱお前もオレなんだよな。ほとんど同じ行動してるもんなぁ」
「だな。・・・それよりさ、オレらこのままでいいのか?ジャベルに戻りたいような」
「あ、オレもそれ考えてた。にしてもなぁ、どうすりゃいいんだろ・・・」
ここはラーメン屋2階。普段は優達の生活スペースとしてつかわれている。決してひろいとはいえないが、
2階建ての2階部分にあるのだからしょうがない。
そんな場所で、スピアとランスはそう言った話をしていた。ただ、二人が話しているのはもっともなことだ。
といえども、それらしい情報を手に入れるのは容易ではない。唯一あるとすれば、もしかしたら同じく地球に
きて、同じような状況になっているかもしれないインペリアだ。ただ、それも無理な話であろう。かくして
二人は、そのままボーッとしていることしかできなかった。
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一方優達は、昼時とあり、いつもの常連客やたまたま入ってきた客などの対応に追われていた。しかし、その
対応は慣れたものだ。注文をうけた大将は、すぐさまそれを作る。そしてそれを優が運び、近くで食べ終わった
食器があれば、調理場に帰るときに一緒にもちかえる。そうすると、次に運ぶ料理ができて、それを運ぶ。
こういった一連のリズムがあるのだ。それにしても、今日はやめに客が多い。それでなくてもスピアとランスの
不始末の処理で大変だというのに、これでは猫の手も借りたいほどの忙しさである。
ウィーン
そうこうしている間に、また新しい客がきたようだ。優はすかさず、
「いらっしゃいま――」
といおうとしたが、そこにいたのは大地だったため、
「なんだ大地か。今日信はいないよ。友達と遊びに行くって言ってたから。それよりさ、ちょっと手伝ってよ
いまめちゃくちゃ急がしいんだよ。ラーメン好きなだけ食べさせてあげるからさ」
と、さりげなく手伝ってくれるようにたのんだ。いつもならたいてい手伝ってくれる大地だったが、今日は
なにか様子が変だ。そんな大地の様子に気づいた優は、
「どうしたんだい、大地?」
そう聞いた。それに対して大地は、なおもかわらぬ様子でこういった。
「一緒にコイ、優」
ただそれだけ言った。そして優の右手をグイッとつかみ、ラーメン屋のそとにでようとする。いつもは優に対して弱気な
はずの大地だったが、今日は違う。いつも強引なのは優なのだが、今回は大地が強引だった。そんな大地だったから
こんなに大地の力が強いとは知らなかった。しかし、大地も男なわけだ。優は抵抗するものの、あっという間に外に
でてしまった。ここでようやく優の手を離した大地。優はさすがに怒っていた。
「おい大地!いったいどうしたんだよ?!」
そんな優にいつもはあとずさりする大地であるはずが、今日はいっさい動じなかった。それどころか、
「いいからコイ。お前らに用だある」
と、優をまた強引に連れて行こうとする。ここで優は妙なことを考えてしまった。
(な、なんなんだよ今日の大地。も、もしかして告られたりして?ってなに考えてんのあたしは!だいたい大地なんて
ただの幼なじみでなんとも・・・あれ?なんかこんなこと考えてたら妙に意識して・・・あーもうっ!あたしバカだ。
ん・・・そういえばお前”ら”って言ったような・・・)
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「やっぱりコイツらも一緒って意味なわけか・・・」
優は、そのまま大地につれられ、近くにある池のほとりへとつれてこらてた。といっても、スピアとランスも一緒だ。
大地の用は、優の考えていたこととはまったくちがっていたのだ。
この池は、優や大地、それどころか大将が生まれる前からあり、この辺りに住む子供の遊び場になっていた。しかし
近年コンピュータでのインターネットの発達や、ゲーム機などの発達により、池で遊ぶ子供などいなくなっていた。
それ故に、そこの池には人っ子一人いなかった。
大地は、3人を池の岩がとびでている部分の近くまでつれてきた。
「で、用ってなんだい?大地」
ようやく歩くのをやめたので、優が大地にそう問う。しかしその瞬間、大地はその場にバッタリと倒れてしまった。
声をかけようとする優。しかし、それはかなわなかった。
「ふっ、ゴクローだった大地。しっかし弱いねーこの星の人間は」
「・・・どんなものでも命はあります。それを粗末にしてはいけない」
「わかってるっつーのフィア。いちいちうっせーんだよバーカ」
唐突に、3人の近くにある岩の上に二人の人間が現れた。
「誰だテメェら!」「誰だテメェら!」
スピアとランスは、相手の様子を見て、あきらかな殺気をかんじていた。それ故に戦闘態勢をとった。
「へっ。名乗る必要なんかねーんだよバーカ」
「私達の目的はただひとつ。あなた達二人――ツー・ウェイを倒すこと」
「その通りだよバーカ。じゃっ、とっととおっぱじめるぞ」
――”ツー・ウェイ”その言葉の意味は、あたしにはわからなかった。ただ分かることと言えば、目の前にい る二人組み
が、スピアとランス、そしてあたしの敵だということだけだった――
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