2、オレもお前でお前もオレ?!
「あははははは!」
ここはラーメン屋店内。優はさきほど穴にいた二人の少年をとりあえずこちらにつれてきた。
そして、なにがあったかと事情を聞いたのだ。
「それで、あんたら二人はいまでもそのインなんとかにおわれてるかもってか?あはは!」
事情を話す二人だが、優や大将はまったく信じなかった。あたりまえのはなしだ。
いきなり「宇宙船が墜落した」なんていわれても信じるはずがない。
「あぁそうだ!いいかげんしんじやがれアホ!だいたい、さっきから”二人”って、どういうことだよ?!
どうみたってオレは一人だけだ。あんたの目おかしいんじゃねーのか?!」
「はぁ?どうみたって二人だろぉ。赤髪のアンタと、青髪のアンタ。にしてもキレイにそまってるねぇ
その髪の毛。あたしもそんだけうまくそめれたらなぁ」
そういいながら自分の茶色の髪の毛をなでる優。そんな優を見て、二人は顔をみあわせ・・・
「なに〜〜〜〜〜〜〜〜?!」「なに〜〜〜〜〜〜〜〜?!」
顔をみあわせるなり二人は叫んだ。そんな二人に驚く優と大将。だがそれ以上に二人は驚いていた。
「な、なんでオレがオレの目の前にいるんだ?!ん、まてまて落ち着けオレ!
ん?よくみたら髪の色が紫じゃねーな青か。なら違うよな・・・。ん?そういえばさっき
そこの女が”赤髪のアンタと青髪のアンタ”とかいってたような・・・。まさかオレの髪・・・」
「な、なんでオレがオレの目の前にいるんだ?!ん、まてまて落ち着けオレ!
ん?よくみたら髪の色が紫じゃねーな赤か。なら違うよな・・・。ん?そういえばさっき
そこの女が”赤髪のアンタと青髪のアンタ”とかいってたような・・・。まさかオレの髪・・・」
また同時に同じようなことをいう二人。二人は店内の壁にかけてあった鏡を見た。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
二人は、自分の髪の色が赤と青であることにきづいた。
「ま、まてまて。とにかく落ち着け!お前ら!!」
二人のただならぬ様子に、大将はとりあえず二人をなだめることにした。
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「・・・つまり、あんたら二人はもともと一人だった、と。で、名前はジャベルで、髪は紫色だった、と。
で、宇宙船が落ちる前はちゃんと一人だったのに、へんな光をみて気絶すると・・・二人になってた、と」
「そうだ」「そうだ」
今までの話のまとめをする優。それに同意するジャベル二人。
ガンッ
優は赤髪ジャベルの頭をグーで殴った。いきなりの攻撃に思わず頭をかかえて倒れこむ。
それと同時に、なぜか青髪ジャベルも頭をかかえて倒れこんでしまった。
「なにアンタまで一緒にたおれてんだい!倒れたら殴られないと思ってるのかい?そんなわけないだろ!」
一息でそういった優は、青髪ジャベルの頭も殴った。頭を抱える青髪ジャベル。
そして、なぜか赤髪ジャベルもまた頭を抱えて倒れこんでしまった。
「だいたいそんな話信じられるわけないだろっ!それにアンタらがいってる宇宙船とやらはどこにもないし」
倒れこんだ二人は、まだ頭が痛いらしく、手で頭をおさえながらなんとか立ち上がり、優に反論する。
「それは!最近オレの星では環境問題が叫ばれてて、最近の排気処分になったりする宇宙船とかそういうデカイもんは
そういうのにプログラミングされてるシステムが働いて、自動的に土に返るようにできてんだよっ!」
ドスッ
いいおえた二人は、それぞれみぞおちに優のパンチをおもいきりくらってしまい、また倒れてしまった。
「そんな話信じられるわけないだろーが!」
「いや、信じてもいいかもよ」
話をまったく信じない優だったが、大将はどうやら違うようだ。
「俺の思うかぎりそいつらがウソをいってるとはおもえないけどなー」
「父さん?!」
優は少し考えた。いつもふざけている父親だが、たまにまじめになると、いつもと違うものをかんじるときがある。
それがまさしく”今”なのだ。それ故に優も考え直そうとしていたのだ。
と、そのとき。さきほど轟音が響いたとき一度はおりてきたものの、その後すぐ2階にもどった大地と信が降りてきた。
そして、大地と信は、もどってくるなり声をそろえてこういった。
「あっ!スピアとランスだ!」
そんな二人に呆れて目をやる優と大将。二人のジャベルはよくわかっていない。
「はぁ?降りてきたと思ったら、いきなりアンタ達はなにいってんの?」
なおも呆れ顔で大地のほうに近きながらそう言う優。そんな優に、大地はもっていたゲームのソフトをズイッとだして、
「これ、さっきいってたゲームなんだけどさ、これんなかにそこにいる二人にそっくりなキャラがいるんだ。
そっちの青い髪のやつが”スピア”で、そっちの赤い髪のやつが”ランス”そいつらコスプレマニアか?」
その話を聞いた優は、クルっと向きをかえ、二人のジャベルのもとに近づいてきて、笑顔でこう言った。
「コスプレか。へ〜、ふ〜ん、そうなんだ。こ・れ・で、アンタらのいってたことがウソってわかったね〜?」
その目はもちろん、笑っていなかった。そんな優の有無を言わせぬ迫力におされ、思わずたじろぐ二人のジャベル。
「さぁ!!壊した店の裏のぶん、しっっっかり働いてもらうからなっ!!!」
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「ったく、なんでオレらがこんなことを・・・」
次の日。
ここはとある早朝市場。優達はラーメンやチャーハンなどに必要な材料の買出しに来ていた。
どこかほかの店で働いているのであろう人達もたくさんおり、市場は活気にあふれていた。
優はいつも、ここまで車で2時間かけてきているのだ。
「おい、スピア、ランス!早くこいっ」
今日はスピアとランスも一緒に来ていた。昨日の優の言葉どうり、働かされていたのだ。
それはそうと、いつのまにやらスピア、ランス、という呼ばれ方になっていた。
かたくなに自分の名前はジャベルだ、と言い張る二人を見て、しょうがなくそうしたのだった。
二人はさきほどから、荷物もちをさせられていた。ラーメンに使う材料どとき、とたかをくくっていたが、
その量は予想をはるかにこえていた。ラーメン屋といっても、ほかにも料理を扱っているのだから、あたりまえだが。
それでもなんとか、全ての材料を買い終え、優の車まで運ぶことができた。
「はいごくろーさん。さぁ、時間がないからとっとと帰るよ」
ヘトヘトになって荷物を運んだ二人は、車の中にドカッと倒れこんだ。
「なんだいなんだい。初日からそんなんでどうすんのさ」
「う、うるさい!こんな朝早くから引っ張り出しやがって!!」
さきほど、ここにくるまで2時間かかるといった。市場が始まるのは5時である。つまり、優達は3時に店をでてこない
といけないということになるのだ。それ故、そうとうの疲れをかんじているのであった。
「さぁ、出るよ」
優はそう言って、車を発進させた。
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それから1時間くらいがたった。まだラーメン屋にはついていない。
「んー?もうついたのか、優」
スピアとランスは寝ていた。早朝からたたき起こされて、重労働させられて、疲れているからだ。
それでも、車が停車したのを感じておきたのだ。
「いや。あたしはいつもここの自販機でジュースを飲むのが日課になっててねぇ、なんとなく」
優はなぜか、いつもその市場とラーメン屋のちょうど真ん中辺りにあるその自販機でジュースを買っていた。
「アンタ達もいるかい?」
スピアとランスのいる、後ろの席をのぞきこんでそう言った。
「くれ」
スピアとランスは同時にそう言って、同時に車から降りた。優もそのあとすぐに降りた。
「そういえばアンタ達、双子なのかい?すごい似てるけど」
「だから!オレらはもともとひとりで――
そこまで言いかけたときだった。スピアとランスはただならぬ気配を感じた。そして、
「優、ふせろ!!」
「え?」
いきなりのことに、優は動くことができなかった。そんな優をスピアがひっぱり、3人は後ろへと転げ飛んだ。
ギャリッ
なにかをひっかくような音がした。その音がしたところを見ると、地面に大きなひっかきキズのようなものがあった。
「インペリアの刺客か?!」
するどく叫ぶスピアとランス。3人の前に立っていたのは、異形だった。
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