1、遭遇



 辺りを見渡して見ると、そこにあるのは木、山、川。
 ここはとある田舎の村らしきところである。 どれくらい田舎なのかというと、もちろんコンビニなどはない。
 店があるとすれば、それは農協だろう。 とりあえず家も建っているのだが、築何年か想像もつかない。
 こんな田舎村に、1件のラーメン屋が建っていた。

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「う〜ん、優ちゃんはいつ見ても美人だね〜」

「だなぁ。まったく、大将の娘なんて信じられんよなぁ」

 ここは田舎村のラーメン屋。 客足は決していいとはいえないが、常連客でなんとかまかなっている。
 店内はいたってシンプルなつくりだ。
 壁は茶で統一され、料理の名前と値段が書いた札がかけてある。 そして、1枚ビールのポスターと鏡が張ってあった。
 席の数も少なく、四人がけのテーブルが四個と、 カウンター席がいくつかあるだけである。
 そのカウンター席に、常連客の二人は座っていた。
 この常連客、ラーメンを食べに来てはいるのだが、
めあてはラーメンではなく、”大将”とよばれた この店の店長の娘である、川崎優がめあてなのだ。

「まぁうちの看板娘だからな」

 そんな二人の会話に、大将も参加した。

「ただな〜、優しい子になれっ、っていう思いで”優”っていう名前にしたのに、
いささか気が強すぎるところがあるからな〜。そこが問題なんですよ」

「はっはっは。たしかにそうですなぁ!」

 そんな3人の会話が盛り上がっているところに、お冷やをもった優が現れた。
 優は、つかつかと3人に近づき、もっていたお冷やを客二人の前にドンっと置き、

「お二人とも〜。あたしのことを美人とかいうのやめてくださいっていいましたよね〜?
 そういうこといわれるとムシズがはしるんで、今後いっさいやめてくださいね」

「は・・・はいっ!」

 笑顔でそう言う優だが、目はぜんぜん笑っていなかった。
 そんな優の迫力に押され、二人はそう言うしかなかった。
 続いて優の攻撃は、大将におよんだ。

「父さん!またそういうこといってる!いいかげんにしないと・・・」

 そういいつつ、手をボキボキと鳴らした。そんな優には大将もおもわずたじろいでしまう。
 この優という女。見た目はショートカットの髪にボーイッシュな顔立ちというかんじで、 おそらく美人といわれる部類にはいるのだが、さきほどの会話をみてもわかるように、 その容姿では考えられないほどの気の強い性格をしているのだ。
 優には幼なじみの男がいるのだが、小さいころから優には頭があがらないでいた。
 と、うわさをすればなんとやら、優の幼なじみがやってきた。

「おじさんコンニチワ〜。お、よう、優」

「よう、優。じゃない!大地!あんたまた信と遊ぶつもり?」

 その幼なじみの名は、五十嵐大地。大地が店内にはいるなり優のそんな声が響いた。

「そうだけど?なんか悪いか?」

 そう大地がそっけなく答えると、優が大地の近づき、首根っこをつかんで、

「あんたね〜。大学生でしょ?なんで小学生といまだに遊んでんのよ?」

 大地は大学1年の19歳である。ちなみに優は、高校卒業後父を手伝うために大学にははいらなかった。
 それと、信というのは優の弟のことで、小学5年だ。大地は、大学生であるにもかかわらず、 頻繁に信と遊んでいた。そしてそんな大地に毎回あきれる優。

「だ、だってしょうがないだろぉ。このゲーム俺一人じゃ攻略できないんだぜー?
だから信にいつもどうやってやんのかきいてんの。・・・それより、その手はなしてくれぇぇ」

 優はとりあえず手をはなしたが、ものすごく呆れ顔だ。あたりまえである。
 と、そこに、大地の声が聞こえたのか、店の2階にある優達の生活スペースから信が降りてきた。

「あ!大地にーちゃーん!!」

 信は、姉とよく似ていた。しかし、性格は幸い違っていた。

「お、信。早速なんだけどさぁ、この城のトラップどうやったら解除できんだよ?」

「あぁ、それはね・・・」

 大地は信をみつけるなりそんなことをいいつつ、2階ヘと上がっていった。

「バカなんだから・・・」

 優や大将はそんな大地をあきれてみていることしかできなかった。

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 それから数時間がたち、客がいなくなり、ガランとした店内。
 ・・・といってももとからガランとしていたといえばしていたのだが。
 優と大将はカウンター席に座り、なにやら雑談をしていた。

「ねえ父さん。ちょっと頼み事があるんだけど・・・・」

 いつもは強気な優であるが、なにか頼み事をするらしく、いつもより弱気なかんじだ。 逆にいつもはおされっぱなしの大将は、妙に強気に思える。

「なんだ?」

「えーと、今大人気歌手のカズキってしってる?それのライブにいきたいんだけど・・・」

 優の頼み事とは、歌手のライブにいかせてほしいということだった。
 カズキとは優の言葉にもあるように、今巷で大人気の歌手だ。歌手といっても、ドラマやバラエティに ひっぱりだこで、俳優やタレントもこなしてしまうのだ。その人柄も人気の秘密だ。
 潤んだ目で優から訴えられる大将は、断れなかった。もとより断るきもなかったが。

「いいぞ。家の手伝いしっかりしてくれるし。母さんがいない分しっかりやってくれるもんな」

 優の母親は、5年前死んでいた。そのころ中学生だった優は、そうとうのショックをうけたものの、 持ち前の気の強さでのりきり、しっかりと母親のかわりをつとめているのだ。優はそれ故に、大学に進学をしなかったのだ。

「ホント?!やった!」

 子供のようにはしゃぐ優。

 ズドーーーーーン

 そんなとき、辺りに轟音が響き渡った。それと同時に大きなゆれも襲ってきた。
 始めは地震かとおもった優だが、少しそれとは違うかんじがした。さきほどの轟音が響いたとき、 その音の中心は店の裏口のほうから聞こえたようなきがしたのだ。そう考えた優は、急いで裏口へと向かった。

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 裏口につくと、そこはひどいありさまだった。いままできれいな花が植えてあった花壇のあたりに 直径5メートルほどの大きな穴があいていたのだ。と、その穴の中に、驚くべきものがあった。

「ひ、人?!」

 その穴の中には、人がたっていた。しかも高校生くらいの少年が二人だ。どうやらその二人も優にきづいたらしく、

「だれだ、お前?」「だれだ、お前?」

 二人は声をそろえてそういったのであった。


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