4章 本格始動!

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「もう、レイちゃん達も一緒に練習すればいいのに」
 土曜日。
 今日はいよいよ、オレの本格的な修行が始まる日だ。オレもリンさんも、朝から意気込んでいたけど、一緒に練習 するとばっかり思っていた秀也とレイさんは、少し前に、自分達は自分達でやる、とでも言わんばかりに、どこかへ出かけてしまった。
 リンさんは、そのことに少しふてくされていたみたいだ。オレは、そんなリンさんをなだめようと、
「リンさん。オレも秀也達と一緒に練習したかったけど、今は秀也には負けられない! って思ってる。だから、オレを 秀也に、いや、誰にも負けない魔人にしてください!」
 と、握った拳に力をいれて、そう言った。
 そんなオレを見てリンも、
「そうだね、そうだよね! あたしもレイちゃんには負けない! よーし、まかせといて。絶対キミを、誰にも負けない魔人に 育てて見せるから!」
 と、手を高くあげてそう言ってくれた。よかった、やる気がでたみたいだ。
「よし、それじゃあ行こっか、拓斗くん」
「え、どこへ?」
「市民公園だよー。そこで練習するの」

 市民公園は、魔集会が行われた市民ホールのすぐ近くにあるらしく、オレとリンさんは、前と同じように、歩いてそこへ向かっていた。 そして、その歩いているときにオレは、リンさんから魔人育成の儀の審査の方法を、たぶん戦ったりするんだろうけど、それはやだな、とか考えながら聞いていた。
「あ、拓斗くん。今、戦うのイヤだなぁとか思ったでしょ? 違うよ。前に言ったと思うけど、魔人育成の儀って、魔の者の格付け って意味もあるけど、それ以前に魔の者を増やすってものなんだから、戦ってもし死人とかでちゃったら、意味ないでしょ?」
「あ、それもそうだね……」
 オレは、一先ず安心して、ホッと胸をなでおろしながらも、じゃあどうやって審査するのか、と思い、そのままリンさんの話を聞くことにする。
「ねえ拓斗くん。”光”をイメージしろって言われたら、どうイメージする?」
 するとリンさんは、突然そんなことを言い出した。
 オレは、なんでそんなことを聞くんだろう、と思って、少しとまどったけど、とりあえず少し考え、答える。
「……う〜ん、明るくて眩しくて、それでいてあったかくて……それがあるとなんか安心できて、あ、一秒に地球を七週半できて ……なんかよくわかんなくなってきた……」
「そう。光って、とらえどころがないっていうか、とってもイメージするのが難しい存在なんだよね。 で、なんでそんなことを聞いたかっていうと、魔人育成の儀の審査の仕方はね、その上級魔法である光を、どれだけ大きく出せるか、 ってことなんだ」
 リンさんの話によると、魔人育成の儀の審査の仕方は、リンさんのその言葉どおり、上級魔法の光をどれだけ大きく出すことができるか、で行われるらしい。だけど、 そこで競われるのはその大きさだけではないらしく、輝きや、その光の形、それと温かみ、全部を総合して決められる、ということらしい。
 審査をうけるオレ達子は、判定役を務める特級魔人の三人と、魔帝のシュラ様の計四人の前で、光の魔法をを順々に披露して、その魔法を四人に見せて、 順位をつけ、格付けが行われる、ということらしい。
 特級魔人が子を育てないのは、これがあるためということに、オレは気付いた。
「……とまぁ、こんなかんじかな〜」
 リンさんは、話をそう締めて、笑顔でそう言った。
「なるほど。とにかく戦わなくてもいいってことが分かってよかったよ」
「それなんだけどね、拓斗くん」
 オレのそんな言葉に、笑顔だったリンさんが、少し深刻そうな顔でそう言った。そんなリンさんを見て、思わず首をかしげてしまうオレ。
「たしかに、それ自体に戦うってことはないんだけど、問題はその前」
「前?」
 オレは、ますます首をかしげてしまった。
「うん。……魔人育成の儀が行われる前にね、子どうしの、潰し合いがあるんだ……」
 オレは、その言葉を聞き、、なんだか背筋がゾクゾクとした。
「少しでも才能があって、自分よりも勝っている子がいれば、不意をついて、再起不能にしたり……殺したり。実際、あたしも 四年前まだ子だった頃、経験があるんだぁ……」
 リンさんは、下を向いて、そう淡々と語る。そんなリンさんを見て、オレはかける言葉が見つからなかった。
「あたし、レイちゃんの子だったんだ、四年前。レイちゃんってすごくてさ、あたしを狙いにきたその子と、その子を育てる 魔の者を一瞬で追い返しちゃって。そんなレイちゃんを見て、あたしもああなりたいなぁって思った。でも、やっぱり恐かったな、 狙われたときは」
 なおも下を向いて話すリンさんに、オレも思わず下を向いて、その話を聞いていた。
「でもね、拓斗くん」
 すると突然、リンさんがクルッとオレのほうを向き、
「あたしは拓斗くんにそんな思いはさせたくないから。もし狙われるようなことがあっても、あたしはキミを護ってみせる、レイ ちゃんみたいに。だから、だから安心してね、拓斗くんっ!」
 と、少し前まで見せていた笑顔よりも、さらに明るい笑顔でそう言った。オレも、そんなリンさんの、健気な笑顔につられて笑顔になり、
「ありがとう! オレも、すごい魔人になれるように頑張るから!」
 と、力強くそう言った。
 はじめは何かと嫌がっていたオレだったが、今はもう、とにかく強い魔人になる、それしか頭になかった。
 オレとリンさんは、よく分からないけどハイテンションになって、それを抑えきれなくなり、ダッ走りだし、目的地へと向かった。
 そのせいで、オレもリンさんも、そのときオレ達を、物陰からジッと見ていた者がいたとは、全く気づかなかった。


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