4章 本格始動!

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「すごいなおい、すごいなおい、すごいなおい!!」
 オレ達は、あれから帰った後、リンさんに秀也のことを紹介して、秀也に、魔法のこと、なぜここにつれてきたか、などを話した。 そのとき、レイさんが魔法を秀也に見せたのだけど、それを見た秀也はすっかり興奮してしまい、そう大声で言ってしまった。
 そんな秀也を見て、オレ、は数日前に初めて魔法を見た自分と重ね合わせながらも、秀也、オレよりもはしゃいでるな、と苦笑をしながら思っていた。
 でも、そんな秀也よりも気になることがあった。実はここに帰る前、オレの家に寄っていたんだけど、そこで母さんに、とんでもないことを言われてしまい、そのことが気になっていた。
 ちなみに、オレが家に寄ったのは、服をとりにいくためだった。オレは今、部活のユニフォームと学ランしか持っていなかったからだ。
「ねえ、リンさん」
「なぁに? 拓斗くん」
「たしかオレがここに住むのを、母さんにうまく説明してくれたんだよね?」
「うん、したよ」
 オレがリンさんとレイさんに捕まってしまったとき、オレがここに住む条件として、リンさんとレイさんが、オレの母さんにその理由をうまく説明し、あたりさわりなくオレを住まわせる、というようなものがあった。
 オレは、二人がなんと言って説明したかは知らなかったけど、オレが家に帰るやいなや、母さんからその内容を聞くことになって、 それが驚きの内容だった。
「母さん、”拓斗! あんな綺麗な人と同棲するなんてすごいじゃないの! 頑張ってらっしゃい”……とか言ってたんだけど ……」
「うん、そういうふうにしたんだもん」
「そ、そういうふうにした……って、それってぜんぜんうまく説明してないじゃないか!」
 二人が母さんに説明した内容とは、”同棲する”というものだった。もちろん、その説明自体間違っていなくもないのだけど、 もっとうまく説明したと思っていたオレは、そう叫ばずにはいられなかった。っていうか、母さんも母さんだよ。同棲なんていう大事、そん簡単な受け取りかたされても……。
「しかも母さん、”青い髪の背の高い女の人”とも言ってたんだけど……」
「だってレイちゃんが拓斗くんのお母さんに話したんだもん。あたしがそんなこと言っても信じてもらえないかもでしょ?  あたし背、小さいし」
 そして、それを言ったのは、あのレイさんのようなのだ。
「信じるとか信じないの問題じゃなくてさ……。っていうか、レイさんがそんなことを言ったってのもにわかに信じられないよ……」
「私がそんなことを言ったらいけないのか?」
 オレは、半ばあきらめムードになってしまったため、ため息まじりで思わずポロリとそうもらしてしまった。しかし、それを運悪く、 さっきまで秀也に魔法を見せていたはずのレイさんが、聞いてしまっていたのだ。
 オレは、背後から聞こえたそのレイさんの声に思わずギクリとなりながら、恐る恐る後ろを向く。
「……貴様、私を無視するのか?」
 びびってしまって、何を言えばいいか分からなくなってしまったオレに、レイさんは追い討ちをかけるかのようにそう言う。
 そんなとき、リンさんが機転をきかせ、口をひらいた。
「ね、ねえねえねえレイちゃん。えと……なんで急に子を? あたしにはそんなこと言ってなかったよね?」
「……悪いか?」
「え、いや、悪くはないけど……」
 リンさんも、レイさんの迫力におされかけてしまったもけど、リンさんのおかげで、なんとかレイさんのオレに対しての嫌悪のまなざしは 消えたようだ。
「……なんとなくだ」
「え?」
「なんとなくだ。私が子を育てようと思ったのは、ただなんとなくやってみようと思っただけだ。そんなとき、リンの子から秀也の ことを聞いたんだ」
「へ、へ〜。そうなんだ!」
 レイさんがそう言うと、リンさんは慌てて相槌を打った。
「そんなことよりリン。貴様はいつから本格的に子を育て始める気だ?」
 レイさんは、さっきまでの話題があんまりよくなかったのか、すぐに別の話題を切り出した。でも、それは大事なことだと、オレは気付く。だからオレは、いいかげんビビるのをやめて、リンさんを見やる。
「ああ、その話ね。いちおうあたしは、今週のお休みからのつもりだよ」
「……そうか……そんなのん気でいいのか? 私は秀也を今からでも育て始める。……行くぞ、秀也」
「ん……なんかよくわかんないけど、それじゃ行ってくる、拓斗っ」
 レイさんは、もう八時すぎだというのに、秀也をつれて出ていってしまった。
 残されたオレとリンさんは、
「……拓斗くん、とにかくあたしは、キミに無理はさせたくないから。学校がある日はあんまり魔法の練習はしないからね。とにかく!  あたし達は今週末から始めます、頑張ろう!」
「……分かった、ありがとう。それじゃ、頑張るぞ〜〜!!」
 オレは、秀也とレイさんのことで気になることもあったけど、とにかく今は、今週末に向け、決意を新たにした。


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