2章 魔集会、そしてあいつ?

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「どうした」
 舞台に立った男を見たオレの様子を、レイさんは不思議に思ったのか、そうオレに問う。
「あ、あの男の人が学校の友達に似てて……」
「そうか。……世の中には三人は似ている者が存在するという」
 あっさりそう返されてしまった拓オレだけど、レイさんにそう言われてしまっては、そう思うしかなかった。
 オレは気を取り直し、別の質問をすることにする。
「……えっと、あの人が」
「魔帝のシュラだ」
 レイさんの答えを聞いたオレは、少し不思議に思うことがあった。それは、特級魔人のフォルテ達でさえ”様”をつけるシュラ様を、レイさんは呼び捨てにする、ということだ。
 オレは、そのことをレイさんに聞かずにはいられなかったので、
「あの、レイさんはシュラ様のことを呼び捨てにするんですね」
 と、思いきってレイさんに言ってみた。
 それを聞いたレイさんは、舞台の上で話をしているシュラ様を見たまま、オレのほうを向かずに、
「悪いか?」
 と、言った。
 オレは、その言葉に、微妙にトゲがあるような気がしたので、またレイさんを怒らせてはダメだ、と思い、慌てて付け加える。
「い、いえ……。ただ、フォルテとか特級魔人でも様ってつけてたから、ちょっと意外かなって思いまして……」
「……フォルテも、様をつけていたのか?」
「え、ええ、まあ……」
 オレがそう言うと、レイさんはなにやら考え事をしているのか、しばらく黙っていた。そして、しばらく沈黙が続き、考え事が終わったのか、オレに、
「……ならば、私も様をつけることにする」
 と言った。
 オレは、少し変な感じを覚え、反応に困ってしまったので、そのまま黙っていた。レイさんも、そんなオレの考えが分かったのか、 しばらくオレの方を見ていたいたみたいだけど、口を開くことはなかった。
 でも、それが災いして、少し気まずい雰囲気になってしまった。自分から黙ってしまったオレだけど、この雰囲気になり、とにかく気を紛らわそうと、シュラ様の話でも聞こうと思い、ステージに目を向ける。だけど、運の悪いことに、ちょうど話が終わったところらしく、シュラ様は舞台脇の階段を降りているところだった。でも、どちらにせよ、レイさんが気になって、シュラ様の話なんてまともに聞いていられなかったと思う。
 こんなときにリンさんはどこに行ったんだよ……。
 とにかくオレは混乱して、グチャグチャといろいろなことを考えては、また自分にツッコみ、そしてまたレイさんが気になると、また別のことを考える、ということを続けていた。
 そんなときレイさんが、ふと思い出したように、話し始めた。
「おい貴様、リンからペンダントは受け取っているか?」
「え、あ、はい、いちおう貰ってますけど……。でも、体によくないから魔法の練習の時以外はつけるなって言われてて、 今は持ってないですけど……」
 レイさんの話は、昨日オレがリンさんから貰っていた、魔力を吸い取るペンダントのことだった。オレは、この雰囲気を立ちきるチャンスだと思ったけど、やっぱりレイさんは恐くて、受け身的なことしかできない。
「そうか。……今考えていたことがあるんだが、それを話す。私は貴様を育てる立場ではない、だからあまり口出しする気はないが、 そのペンダントで言っておきたいことがある。たしかに、リンの言うとおり、常にそのペンダントをつけていると多少害はある。 しかし、それは本当に微々たるものだ。そして、そのペンダントを長くつけていればいるほど、魔法を使うことに慣れる。常に魔力が体外に放出されるからな。 つまり、私が言いたいのは、そのペンダントを常ににつけていろ、ということだ」
 オレは、それを聞いて、少し考える。
 リンさんの意見に従うか、レイさんの意見に従うか。でも、その答えはすぐに出ることになる。なぜなら、レイさんがすぐ隣で、オレを睨んでいるからである。
「わ、分かりました。ずっとつけときます」
「そうか。それなら私のペンダントを渡す。リンのものより魔力を吸い取る率を少し下げてある」
 レイさんはそう言うと、ペンダントを取り出し、オレに渡してくれた。
 オレは、黒い光が、リンさんのものより少し淡いような気がする、などと考えながら、そのペンダントを首からさげた。
「このことはリンには言うなよ」
 それを見たレイさんは、オレにそう言った。
 と、ちょうどその時、
「あ、レイちゃん、拓斗くん見っ〜け!」
 ふいにリンさんの声が聞こえ、タタタと、リンさんがオレ達の方に走ってきた。
「隠せ」
 それを見たレイさんは、オレにそう指示する。オレは慌てて服の下に隠した。
「ねえ、何話してたの?」
「……」
 リンさんは、オレ達の所に着くと、すぐそう言ったが、レイさんは特に答える様子はなかった。オレも、なんでかは分からなかったけど、”リンには言うな”とレイさんに言われていたから、 それに習って、だんまりをする。
「ん〜? ……まあいっか! ところで拓斗くん、今さっきまで魔人育成の儀のことの説明があったけど、聞いてた?」
「え?」
 リンさんは、だんまりを続けるオレ達に、少しムッとしたようだったけど、すぐにいつものペースに戻って、そうオレに問う。
 オレは、レイさんと話していたので、そんなことは気づきもしなかった。
「も〜、なんのために魔集会に来たの〜。しょうがないなぁ、追々あたしが説明したげるね。それじゃ、帰ろっか!」
 気付くと、いつのまにか魔集会は終わっていたらしく、会場に集まっていた魔の者達は、わらわらと会場をあとにしている。
 オレ達も、その波に乗って、帰ることにした。 


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