2章 魔集会、そしてあいつ?

     1


 昨日は混乱しまくりの流されっぱなしだったからな。今日は、言うこと言わないと。
 翌朝。
 オレは、海美さんが用意してくれたベットに寝転がりながら、そんなことを考えていた。
 オレは、昨日はあれから海美さん達が用意してくれた夕飯を食べて、風呂に入って、そして寝た。早い話、一泊してしまったということだ。 オレは、こんなんでいいのか、などと考えていたけど、魔法のこともあって、あの二人は恐いし、オレはこういう性格だし、結局オレは何もできなかった。
「あ、拓斗くんおはよ〜」
 オレがベットから起き上がって、オレが寝ていた部屋の隣にあるリビングへ行くと、もう起きていた海美さんが、朝飯らしき物を テーブルに運びながら、オレに向かってそう言った。
「え、あ、おはようございます……」
 オレも、とりあえず返事を返す。
「なにボーッと立ってんの! こっちきて座って! ご飯にするから〜」
 寝起きで、あんまり頭が冴えてないってこともあるけど、やっぱり、こんなおかしな状況におかれてしまっているオレは、 なんとなく立ち尽くしてしまっていた。でも、海美さんにそう言われ、朝飯が運ばれるテーブルのイスに座る。
 運ばれてくる料理を見ると、とりあえず普通、いつもオレが食べているようなもので、安心はしたけど、すぐにハッとなって思い返し、とにかく、言うこと言って家にかえしてもらわないと、と考え、オレは、さっき起きたときに考えていたことを、ちょうど料理を運び終わって、オレと反対側のイスに座った海美さんに、今言わんと、 意気込んだ。意気込んだんだけど、
「えっと、あの、か、海美さん……。え、えと、あ、家に……」
「ん? なになに〜?」
「あ、ん、え、い、家に、れ、連絡したいんですけど……。一泊しちゃって、親に何言われるか分かんないし……」
 と、言いたいこととは全く違うことを言ってしまった。
 や、やっぱりだめだ。どうしても魔法のことを意識しちゃって、目の前の、オレより年下の海美さんが恐く見えて、本当のことを言えない。もし本当の ことを言ってしまったら、魔法で何をされるか分からない。だから、オレは、考えていたことと、違うことを言ってしまうのだ。
「ああ、そのことは大丈夫。心配しないでいいよ。あたし達がうまくやってあるから。あ、ついでに言っておくと、 学校はレイちゃんに車で送ってもらってね。ここからだと少し遠いから」
 うまくやるって言われても、ただ困るオレ。たしかに魔法を使えばそれくらいのことは可能だとは思うけど、って、待ってよ。ということは、オレはずっとここで暮らせってことか? 冗談じゃない。こんな現実離れしてる生活なんて、とんでもない。なんとしても、家に帰らないと。
 あっさりと海美さんに答えを返されてしまったオレだけど、とにかく また新たにそう決意した。だけど、
「あ、拓斗くん、今はやく家に帰りたいな〜、とか思わなかった? 顔に書いてあるぞ!」
 と、海美さんに言われ、また考えていることを読まれたような、不思議な気分になって、そして、追い討ちをかけるように、
「もしホントにそう考えてるんだとしたら、悪いけどそれは無理かな。なによりレイちゃんが許さないだろうし、あたしだって、 せっかく才能ありそうなキミを捕まえることができたんだから放したくないもん。……こういうのって法に触れるような気もする けど、警察とか軍隊だって、あたし達魔の者の敵じゃないし……ね?」
 と言って、にっこり笑った海美さんを見て、オレは、山綺さんも恐いけど、海美さんにはまた別の恐さがあるのかも、などと考えてしまい、 これでいよいよ、さからえなくなってしまった。

 しばらくして、朝飯を食べ終えたオレと海美さんは、その片付けをしていた。といっても、実際に片付けをしているのは海美さんだけで、 オレはただビクビクしながら座っているだけなんだけど。
「あ、拓斗くん。さっき言い忘れてたんだけど、今日”魔集会”っていうのが午後からあるんだけど、それ行くから。 ちなみにレイちゃんは先に行ってるんだ〜」
 また、新しい単語が出てきてしまった。オレは、もう一杯一杯だったけど、とりあえずその言葉の意味を聞く。
 魔集会とは、半年に一回、魔人や魔女、まとめて言うと魔の者っていうらしいけど、どこかの会場に集まり、集会を行うというものらしい。その内容は、 そのときによって違うけど、今回の集会は、魔人育成の儀とかのことについて話されるらしく、かなり重要なものなんだそうだ。だから、
「拓斗くんも、出席しないとダメだよ? 今回の集会は、魔の者とそれになろうとしている者は絶対に出ないといけないんだから」
 と、言われてしまった。
 さすがのオレも、このことばの意味はなんとなく分かったので、必要以上にとまどうことはなかった。
「分かりました、行きます。……というか、いやっていってもどうせ行くはめになるんでしょう?」
「わかってるじゃない!」
 オレは、もういいかげん、腹をくくることにした。たしかに家には帰りたいけど、それはあくまで、”生きて”の話しで。魔法で何かされたら それこそたまったもんじゃない。だから、もう開き直って、海美さんに従うことにしたのだ。
「あ、ところでさ〜、あたしに敬語使うのやめてもらえないかな〜? な〜んか、くすぐったいし、話しづらいし」
「え、はい。わかりました」
「ほら〜、早速使ってるし〜」
「あ、ごめんなさ……ごめん!」
「それでよし!」
 そしてオレ達は、そんなことを話しながら、その魔集会の会場に向かった。

 「あ、拓斗くん、一個大事なこと教えとくね」
 魔集会の会場までは、海美さん達の、いや、もうオレも、みたいだけど、住むマンションからそう遠くはないらしいので、歩いてで向かうことにした。そんなとき、急に 海美さんがそう言った。
「何?」
「えっとね、あいさつっていうか、礼の仕方〜。キミさ、学校とかでやるのって、ただ頭下げるだけの礼だよね? でも、あたし達 魔の者の中でやられてる礼は……」
 海美さんはそこまで言うと、立ち止まり、オレの方を向いた。そして、手をあわせて、その状態のまま頭をさげた。なんか、小学校時代よくやった、”いただきます”みたいだ。
「……こんなかんじかな。ただ手をあわせただけ、って思うかもしれないけど、手があるかないかでかなり印象変わっちゃうから 気をつけてね」
「こう?」
 オレも、海美さんの真似をして、内心でいただきます、と言いながら、その礼をした。
「OKOK、そんなかんじ! それじゃ、改めて魔集会に、レッツゴー!」
 海美さんは笑顔でそう言って、進行方向を人差し指でさした。そして、ダッ、と走り出す。一瞬、突然走り出した海美さんに驚いたオレだけど、オレも海美さんに続き、走り出す。もう、どうにでもなれ。


 TOP 
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送