10章 表・裏、それぞれの

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「おいー、どういうことなんだよ、それ!」
 オレは、驚愕し、そして困惑していた。
 仲間にしようとしている? 訳わかんないよ。よく考えたら、何でオレは裏魔人派なんかに狙われてる んだろう。
 湖矢が叫んだけど、湖矢が叫んでいなかったら、きっとオレがそうしていた。
「ヒロム、そう興奮せんと〜」
「これが興奮せずにいられるかよ! お前もだろー、倉地ー!」
 リノファさんが、湖矢をなだめようとしたけど、かえって逆効果のようだ。さっきまで湖矢と同じく興奮 しかけていたオレだけど、湖矢の興奮ぶりを見て、オレはなんとなく落ちつこうと思った。
「まあ……ね。それよりも、オレは何でオレ達が狙われてるのかっていうのが気になるよ」
 そしてオレは、またすぐに疑問を問うことにした。
 オレは最近、思った疑問はすぐに問うことにしていた。オレは、少し考え、そして結論が出たことが ある。それは、リンさんとレイさんのことだ。リンさんとレイさんが決別したのは、オレのせいだと思う。 オレがレイさんからペンダントを渡されたとき、レイさんにそのことをいろいろと聞いていれば、 二人は決別せずにすんだかもしれない。だからオレは、もう後回しにするのはやめにしたんだ。
「拓斗さん、裕務さん、覚えていませんか?」
 オレの問いに、ランさんが逆に質問を返してきた。なんのことか分からず、オレと湖矢は、思わず顔 を見合わせる。
「あれだよ、拓斗くん。あの、初めて市民公園に行ったときの……」
「……え? もしかして、あの爆発の……?」
 オレは、リンさんの言葉を聞き、そのときのことを思いだし、半分は納得することができた。でも、 もう半分は納得がいかなかった。というのも、あれはすごい爆発だったらしいけど、ランさんのおかげで 不発だったし、そもそもあれはまぐれで起こせた魔法だ。その程度のもので、裏魔人派がオレを狙う、 ましてや仲間にしようとしているだなんて、おかしすぎるからだ。
「あの、それって……」
 だからオレは、例によってまた質問をしようとした。
「……で、では拓斗さん、さきほど申していた、なぜ裏魔人派の魔の者の区別ができないのか、という 質問にお答えしますわ」
 だけど、そのオレの言葉をかき消すように、ランさんがそう言った。
 なんだか様子がおかしい。リンさんも、オレと目を合わせようとしない。絶対、何か隠してる。
「拓斗さん、あなたは今朝、妙なお面の男に襲われた、とおっしゃっていましたわね?」
「え……あ、はい」
 そうは思ったものの、リンさん達の言動を見たからかは分からないけど、なんだかオレは、事実を 知るのが恐いと感じた。今までそんなことなかったから、オレはそんな自分に驚いてしまった。かくして オレは、そのままランさん達の話を聞くことにする。
「裏魔人派はね、普段裏じゃないところでは、普通に魔の者をやってるんだ。でも、戦うときだけは、 それぞれの仮面をつけていて、顔を分からないようにするんだ。だから、拓斗くんが朝見たお面の 人もきっと……」
「しかも、ただのお面だからってなめちゃいけねぇ。その仮面はな、それをつけると、声や、そいつから 受ける印象をかえて、さらに、魔力波動さえもかえちまう。つまり、ほぼ間違いなく誰か断定するなんて、 無理な話なんだよ」
 リンさんがそう言い、それにティーファさんがつけたすようそう言った。
 魔力波動とは、人が発する気配みたいに、人が持つ魔力が発する気配みたいなものらしい。
 あれ? そういえばレイさんは、仮面をつけていなかった……なんでだろう。オレにわざと顔を見せて 動揺させようとしたとか? いや、それは考えにくい。じゃあ、もっと別の何か……?
「なあ、拓斗」
 その時、秀也が至極小さな声で、オレに耳打ちをしてきた。
「何?」
 オレは、考え事をしていたせいで、思わず声をひそめるのを忘れ、そう言ってしまった。
「バカ! 声でかいよ!」
 そんなオレを見た秀也は、なおも小声で、人差し指を口にあてながらそう言う。
「ごめんごめん、で、何?」
「何? じゃねーよ! よく考えて見ろ、仮面といったら……」
「……!」
 そうだよ、よく考えたら、いや、もっと早く気付くべきだったけど、仮面といえば、仮面集めの趣味を 持つ、リノファさんじゃないか。
 リノファさんって、いったい……?


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