5、驚愕の戦い



 アフレイド達が、まだカズキの繰り出したドールと戦っているころ。 「スーペリア!」
 ここは、今アフレイド達が戦いをしている廊下より、5部屋ほど先にある、おそらく食事をするのであろう部屋である。  ここでインフェリアは、スーペリアを追って走り、ようやく追いつくことができた。
「スーペリア、オレより劣ってるくせに、どこいくんだよ。お前の身になにかあったら、オレにも被害がおよぶんだぞ!」
 インフェリアは、走るのをやめ、こちらを見ているスーペリアに、大声でそう言った。
 一方のスーペリアは
「大丈夫ですよ、インフェリア。その心配はありません」
 やけに冷静にそう言った。
「なに?」
 そんなスーペリアの様子と、その言葉に違和感をおぼえたインフェリアは、スーペリアに歩いて近づきながらそう言った。
「実はですね、ボクは今まである研究をしていたんです、それは……」
 スーペリアはそこまで言うと、手を上にのばした。すると、その手のまわりだけ黒い光が現われ、その光が消えると、手には スーペリアの銃――ラックが握られていた。そして、ラックをかまえ、インフェリアに銃口を向けた。
「! なんの真似だ?」
 インフェリアは、そのスーペリアの行動が理解できず、ただそう言うしかなかった。
 それに対してスーペリアは、いたって冷静につづける。
「ふふふ。その研究というのはですね、ツー・ウェイのメカニズムを解明して、ツー・ウェイどうしの相互関係をうちきる というものだったんですよ。そして、少し前、ようやくそれが成功したんです。やはり、金持ちは違いますね。設備の充実とか、 スタッフとかが。カズキさんやツァーリさんとカイゼルさん達に感謝……ですね。……これでどういうことかお分かりですね?」
「……っ」
 インフェリアは、スーペリアのその言葉は、理解はできたものの、納得したくはなかった。
 まさか、自分のツー・ウェイであるスーペリアが、自分達の敵であったはずのカズキ側についていようとは、夢にも思わなかった。
「さて……と。おしゃべりはここまでです。ボクはインフェリアを倒さなくてはならない」
「……本当にその研究が成功したなら、もうオレとお前は別人なんだな?」
「そういうことですね。だから遠慮なしに、戦えますよ」
 インフェリアは正直なところ、スーペリアとは戦いたくはなかった。いつも憎まれ口を叩いていても、それは自分が自分にいっている だけのことだ。ツー・ウェイはもともと一人の人間であるから当然である。だが、その”自分”であったはずのスーペリアは、 敵に寝返り、さらにツー・ウェイとしての関係を断ち切ったといっているのだ。万が一、そうだとしても、やはり、”自分”という 存在とは戦いたくなかったのだ。だが、
「おじけずいたんですか? なら、ボクからいきますよ?」
 スーペリアがそう言って、ダッ、と走り出した。インフェリアは、その言葉に、カチンときていた。故に、ついにインフェリアも 決意し、スーペリアと戦うことになった。
「劣っているお前が、オレに勝てるはずがない!!」
 インフェリアはそう言うと、こっちに向かって走ってくるスーペリアに、自分の銃――ワイトを向け、そして、引き金をひいた。
 その瞬間、ワイトから白い球体がとてつもない速さで発射された。このとき、インフェリアとスーペリアとの距離は、5メートル に満たない。インフェリアは、その攻撃がスーペリアに当たったものだと確信していた。だが、
「甘いですよ、インフェリア。あなたの直線的な攻撃ではボクに攻撃をあてることは不可能です」
 スーペリアは、ワイトから球体が発射された瞬間、上にジャンプしていたのだ。故にインフェリアの攻撃はあたっていなかった。
「な、なにぃ?!」
 驚くインフェリアに、スーペリアはそのまま上に跳んでいる状態からラックをかまえ、間髪いれず、ひきがねをひいた。
 ラックからは、黒い球体が、これまたとてつもなスピードで発射される。インフェリアは、驚きと、さきほどの自分で放った 攻撃の反動で、その球体をよけることができなかった。そして、
「ぐぁぁぁぁ!」
 インフェリアに球体が直撃した。球体が着弾した所を中心に、黒い爆風が起こる。そして、その爆風がはれると、そこには 全身傷だらけで血を流し倒れている、インフェリアがいた。
「く、スーペリア……」
「なんで劣っているお前なんかに……とかいいたそうな顔ですね」
「ぐ……」
 スーペリアは、ツー・ウェイであるインフェリアが傷を負っても、自分もダメージをうけることはなかった。どうやら本当に、 相互関係を断ち切ることに成功したらしい。
「ふふ、悔しそうですね。今まで”劣っている”と思っていたボクにやられたんだから当然ですね」
「う、うるさい!」
「ふふふ、一つ、教えておいてあげましょう。あなたたしか前、”ジェネラルんときより弱くなってるし”って言ってましたよね?」
「そ、それがなんだってんだよ!」
 インフェリアは、その言葉の意味が理解できず、思わず聞き返す。
「ツー・ウェイ、というものを思い出してください。もし仮に、ボクがあなたより劣っているとします。それなのに、あなたは もともとの人間よりも弱くなっている。これはどういうことはわかりますか?」
「……!」
 ツー・ウェイというものは、一人の人間が、二人になってしまう現象である。そのわかれてしまうパターンの一つに、 一人はもとの人間より弱くなっていて、もう一人は強くなっている、というものがある。だが、今この状況だと、 インフェリアとスーペリアは両方元の人間よりも劣っていることになる。これは、あきらかに矛盾している。
「気づきましたか? そう、あなたも弱くなっていて、ボクまでも弱くなっているはずはない。むしろ、強くなっているんですよ」
「く、くそ〜〜〜!」
 インフェリアは、スーペリアの話を聞き終えると、傷だらけの体をなんとか起こし、ワイトをスーペリアに向けた。
「往生際が悪いですね。あなたの攻撃は、ボクには当たりません。……それと、もうひとついっておくと、ボクの名前は スーペリアで、あなたの名前はインフェリア。この名前を考えたのはボクでした。この名前、この星にある、英語からとっているんです。 意味は、スーペリアが、優れている。インフェリアは……劣っている、です」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 インフェリアは、ワイトを乱射した。あたりは、白い爆風につつまれる。
「だからあなたの攻撃はあたらないといっているでしょう。これで……最後です」
 インフェリアは、また、さきほどと同じように宙にジャンプし、インフェリアの攻撃をかわしていた。そして ノクロを発射した。インフェリアの視界は、闇に閉ざされた。
「心配しないでください、殺しはしない。あなたはまだ利用しなくてはいけませんからね。それと……ワイトはもらっておきますよ」
 スーペリアはそう言うと、インフェリアの手に握られていたワイトを手にとった。
 と、スーペリアのすぐ近くにある扉から、タタタ、と、人の走ってくる音が聞こえた。
「カズキさんは突破されてしまったようですね。……では、こちらも準備しますか」
 スーペリアはそう言うと、インフェリアをかつぎ、歩き出した。
 スーペリアの顔は、怪しく笑っていた。


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